神様修行はじめます! 其の五
 結界の内側には水がなくて、普通に呼吸ができる。


「……ブハッ! ゼハ! ハァハァ……!」


 もの凄い勢いで深呼吸を繰り返しながら、『あぁ、あたしやっぱり息苦しくて死にそうだったんじゃん!』って自覚した。


 やっばー! 眠るように人生を終えるところだった!


 こんな風に自覚のないまま死んじゃった人が、『あれー? なんか自分、変じゃね?』って、マゴマゴ動き回ったりして幽霊になるのかな?


 ……それはともかく、みんなは無事だろうか? 近くにいればいいけれど。


 息が楽になって脳に酸素が回り始めたせいか、意識がハッキリして、気持ちに余裕がでてきたみたい。


 まだ体はぜんぜん動かないから、なんとか首だけグキグキと動かして、周りがどうなっているのか見極めようとした。


 すぐ横に、しま子がうつ伏せ状態で倒れているのが見えて安心した次の瞬間、ギョッとする。


 倒れてるっつーか……埋もれてますけど!?


 体の厚みの八割くらい地面にずっぽり埋まってて、背中の一部とトラシマパンツしか見えない状態なんですけど!


 しま子は体重がある分、強烈な圧がかかったらしい。


 倒れた拍子に、水底に体がメリ込んじゃったんだ! そのまま結界でラッピングされちゃった!? そんなんで呼吸できてんの!?


「ちょ、しま子! しま子、無事!? 無事なら返事してー!」


 必死になって声をかけたけれど、返事は聞こえない。


 どうやらこの結界に、相互音声機能はついてないらしい。


 それでもしま子の体が、水底から抜け出そうとピクピクもがいているのが見えて、ひとまず安心した。


 よ、良かった生きてた。どうやらあたしと違って体もだいぶ動けるらしい。


 このぶんなら、自力で脱出できそう。しま子頑張れ! 手は貸せないけど精神的に応援してるよ!
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