神様修行はじめます! 其の五
 他の仲間の姿も探して視線を巡らすと、皆あちこちで倒れている。


 全員、意識を失ってるのか痺れているのか、まったく動き出す様子はない。


 けど、あたしやしま子と同じ結界に包まれているみたいだから、命に別状はないはずだ。ふう、良かった!


 と思って胸をなでおろしていたら、ひとり異様に動揺しているクレーターさんの姿が目に入った。


 どうしたんだろう? 倒れた体勢のまま、必死の形相で叫び続けている。なに叫んでるのかぜんぜん聞こえないけど。


 疑問に思ったあたしは、クレーターさんの視線の方向へ目をやって、その光景に息をのんだ。


「す、水園さん!?」


 いつの間にか意識を取り戻したのか、水園さんが立ち上がっている。


 この結界、きっと水園さんがアイテムを使って張ってくれたんだ!


 この人数の全員分の結界アイテムなんて、どれだけの量の宝物をチョロまかしてきたんだろう……。


 さっきも堂々と水晶をかっぱらってたし、このひとって儚げな美人のわりに、けっこう大胆な性格してるよなぁ。


 ……って、それはいいんだけど、いや全然よくはないんだけど、それよりなにより水園さんの目の前に、あの黒い異形がいる!


 異形は、水晶を奪い返そうとしているのか、それとも水園さんを襲おうとしているのか。


 霧の思考なんて読めないけど、少なくとも友好ムードじゃないことだけはたしかだ!


 青ざめた表情で追いつめられる美女に、異形がジリジリと近寄っていく。


 まずい! 非常にマズイ!


 あたしたちを助けてくれた水園さんが、クレーターさんの目の前で異形に殺されてしまう!


 冗談じゃないよ! そんなバッドエンドはゴメンだっつの! あたしは根っからのハピエン主義なんだから!


 あたしの滅火の力で、水園さんを守らなきゃ!
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