神様修行はじめます! 其の五
「必要電力ならさ、目の前にあるじゃん。小型だけど、自前で発電できる超強烈なのが」
「やかましいわ小娘。だれが超小型発電機じゃ」
ちょうど日陰になっている畳の上に、絹糸がデローンと寝そべって涼をとっている。
お腹丸出しの実に猫っぽい体勢の絹糸に、あたしはブチブチ文句をたれた。
「だってまだ六月だってのに、このスーパー高気圧ったら腹立つ!」
「『心頭を滅却すれば、火もまた涼し』じゃ」
「はあ? いきなりお経なんか唱えないでよ。頭大丈夫?」
「……お前は現世の学校で、なにを勉強しておるのじゃ?」
「学校ではお経なんか教えないもーん」
「これが天内一族の、なれの果てとはのぅ。情けなくて涙も出んわい」
「それ、暑くて水分足りてないだけじゃない? 気をつけないと熱中症になるよ?」
絹糸は長いシッポをユラユラ揺らめかせながら、いかにも呆れた様子で溜め息をついた。
「ねー、そのメトロノームみたいなシッポの動き、リズミカルにムカついて体温上がるから、止めてほしいんですけどぉー」
「お前よりも我の方が、よっぽど暑いわい。我は毛皮を着ているのじゃぞ?」
「嫌ならさっさと脱げば?」
「脱げるか。別の生き物になってしまうわい」
「……たしかに。今ちょっと脱いだ姿を想像しちゃったら、怖かった……」
「……我もじゃ」
しま子が、かいがいしく打ち水をしている中庭は、まだ午前中だというのにもうこんなに陽射しが強い。
松の木にも敷石にも、燦々と明るい光が降りそそいで、視界全体の色素が濃く強烈に見える。
しま子が振るうヒシャクから散って落ちる水が、夏の熱い光に照らされて、クリスタルのビーズみたいにキラキラして綺麗だった。
「やかましいわ小娘。だれが超小型発電機じゃ」
ちょうど日陰になっている畳の上に、絹糸がデローンと寝そべって涼をとっている。
お腹丸出しの実に猫っぽい体勢の絹糸に、あたしはブチブチ文句をたれた。
「だってまだ六月だってのに、このスーパー高気圧ったら腹立つ!」
「『心頭を滅却すれば、火もまた涼し』じゃ」
「はあ? いきなりお経なんか唱えないでよ。頭大丈夫?」
「……お前は現世の学校で、なにを勉強しておるのじゃ?」
「学校ではお経なんか教えないもーん」
「これが天内一族の、なれの果てとはのぅ。情けなくて涙も出んわい」
「それ、暑くて水分足りてないだけじゃない? 気をつけないと熱中症になるよ?」
絹糸は長いシッポをユラユラ揺らめかせながら、いかにも呆れた様子で溜め息をついた。
「ねー、そのメトロノームみたいなシッポの動き、リズミカルにムカついて体温上がるから、止めてほしいんですけどぉー」
「お前よりも我の方が、よっぽど暑いわい。我は毛皮を着ているのじゃぞ?」
「嫌ならさっさと脱げば?」
「脱げるか。別の生き物になってしまうわい」
「……たしかに。今ちょっと脱いだ姿を想像しちゃったら、怖かった……」
「……我もじゃ」
しま子が、かいがいしく打ち水をしている中庭は、まだ午前中だというのにもうこんなに陽射しが強い。
松の木にも敷石にも、燦々と明るい光が降りそそいで、視界全体の色素が濃く強烈に見える。
しま子が振るうヒシャクから散って落ちる水が、夏の熱い光に照らされて、クリスタルのビーズみたいにキラキラして綺麗だった。