神様修行はじめます！　其の五
　その声は、その心は、苦しんでいた。


　紛れもなく苦悩していた。


　そしてなにより……『赦し』を請うていた。


　彼があたしに対して、赦しを求めている。


　あたしに対して深い罪悪感を抱いている。


　……なにに？　どんなことに対して？


　津波のように押し寄せる不安に心臓がドクドクと早鐘を打ち、呼吸が乱れ、胸が大きく上下する。


　せっかく黒い水の影響から逃れて綺麗になった心に、魔物のような得体の知れない感情が、モクモクと生まれる。


　その『魔物』を必死に押さえつけながら、あたしは、認めたくない事実を否定するために、彼の姿を目で探した。


　望む通りの門川君の姿を見せて。


　あたしを堂々と見つめてくれる門川君の姿を見せて。


　あたしに誓ってくれた変わらぬ愛を、その胸に抱き続ける門川永久を見せ……。


「……！」


　そしてあたしの目は、ついに見てしまった。


　水園さんの体をしっかりと胸に抱きながら、苦悩と罪悪感に満ちた目を、あたしから懸命に逸らしている門川君の姿を……。

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