神様修行はじめます! 其の五
「それでこそアマンダ! さすが、わたくしの親友ですわ!」


 心底嬉しそうな声のお岩さんが、満面の笑顔を見せてくれる。


 そうだよ。お岩さんはあたしの親友だ。


 その親友はいま、複雑な恋愛感情に翻弄されている、のっぴきならない状態なんだ。


 水絵巻を手に入れて、お岩さんの心を袋小路の中から救い出したい。


 自分のことばっかり考えてる場合じゃない。


 あたしは、彼女を置き去りにして帰るわけにはいかない!


「小娘が目を覚ましたところで、現実問題、これからどうするかのぅ?」


 絹糸がシッポをユラユラさせながら、つぶやいた。


「いつまでも、ここにいるわけにはいかぬ。皆でここから移動せねばならぬわけじゃが……」


 そう言われて、改めてあたしは、いまの異常事態を再認識した。


 移動するったって、どこに? いやそれよりもまず、どーやって移動すんのよ? この全員を引き連れて。


 こうして見ると、現世の日常空間の中でみんなの姿は、ハッキリくっきり4K画像ばりに鮮明に浮いている。


 金のラメ入りオーガンジードレス姿の貴婦人。


 漆黒の執事服スタイルの美形男子。


 袴姿の美少年。平安貴族衣装のマロ化粧。死に装束風の真っ白中年男性。


 それと、小山のような大きな赤鬼と、しゃべる猫。


 ……どーすんだこれ? 手に負えないんですけど。


 もしもこんな集団が近所でウロウロしてたら、あたしぜったい通報するよ。特に赤鬼はヤバイ。


 他の人たちは、『ちょっと勘違いしてるコスプレ好きでーす』って誤魔化せるけど、しま子はどうにもならん!


 職務質問されたら、ご当地キャラの着ぐるみってことで、言い逃れるしかないな。


 やたら完成度の高い着ぐるみだけど。
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