神様修行はじめます! 其の五
「人目の多い表通りさえ避ければ、そう騒ぎになることもなかろう。これが真っ昼間じゃったらと思うと、さすがにゾッとするがのぅ」


「夜に紛れて移動するにしたって、どこに? 悪いけどウチは泊めてあげらんないよ?」


「安心せい。この大人数で押し掛けるような非常識なマネはせんわい」


「いや、人数が非常識なんじゃなくて、構成メンバーそのものが非常識なんですけど」


 もしこの連中を家に連れていったりしたら、お父さんとお母さんがどんな反応することか。


 想像つきすぎて怖い。怖すぎて、ちょっと見てみたい気もするけど。


「ホテルにでも泊まるの? お金持ってる? でもこのメンツで押し掛けたら、フロントで拒否られそうだね」


「小娘よ、お前が初めてあちらの世界に足を踏み入れたときのことを、覚えておるか?」


「そりゃ覚えてるよ。亡くなったじー様のメモに書かれていた住所を尋ねたら、不思議な家があったんだ」


「その家に行く」


「……へ?」


「あの家は、こちらとあちらの世界を繋ぐ拠点じゃ。利用させてもらう」


「利用するって、あの家は玄関開けたら『ザ・異世界ワールド』じゃん? どうすんのさ?」


「案ずるでない。とにかく行くぞ。皆、我について来い」


 そう言って絹糸は軽快に歩き出す。


 他に行く当てもないあたしたちは、黙って言う通りについて行くしかなかった。


 夜の暗闇の中で白く浮かび上がる絹糸の後ろ姿を、なんとも奇妙な集団が、ゾロゾロと連れ立って歩いていく。


 ……傍から見たら、ほんとに異様な光景だろうなー。
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