神様修行はじめます! 其の五
 ぜんぜん言うこと聞かない大型犬の集団みたいなグループを引き連れながら、それでもなんとか目的地にたどり着いた。


 懐かしの一軒家を見たときは、感慨よりも疲労と安堵感でいっぱいで、グダーっと脱力してしまった。


「よ……よかった。無事に到着できて。途中で誰かとバッタリ遭遇したらどうなるかと思った」


「特撮映画の撮影だと言い張るしかあるまいのぅ。小娘、玄関を開けよ。中に入るぞ」


「開けろったって、カギは?」


「扉に触れた者の、神の一族としての能力がカギとなるのじゃ。ほれ、はよう開けんか」


 絹糸に催促されて、あたしは玄関のドアノブに手をかけてカチャリと開いた。


 あ、ホントだ開いた。でも、中に入ったところでどうにもならないんだけどなぁ。


 だってホラ、この一般家屋の玄関ドアを開けると、そこには広大な異世界ワールドが延々と広がって……。


「…………」


 ドアノブに手をかけた状態で突っ立ったまま、あたしの動作とすべての思考が一時停止した。


 だって、ドアを開けたら、そこには広大な……


 そう、とっても広大な、かつご立派な、お武家屋敷の外観がドデーンとそびえ立っておりましたとさ……。


「…………」


「小娘、なにをボサッとしておる? はよう中に入…… って、せっかく開けた扉を閉めてどうするんじゃ!」


「なんで!? なんで一般家屋の玄関開けたら、そこに武家屋敷の立派な表門が見えなきゃなんないの!?」


 ここ、異界の入り口じゃなかったの!?


 この玄関の構造って、いったいどうなってんのよ!? 某ネコ型ロボットの四次元ポケットか!?


 ……いっそ欲しいわ、この玄関! この屋敷ごと!
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