神様修行はじめます! 其の五
 幻覚でも見てるのかと思って両目をゴシゴシ擦ってみたけど、やっぱりポケットサイズだ。


 な、なにこれー! なんでこんな極小サイズになっちゃったのー!?


「ふむ、どうやら成功したようだな。赤鬼よ、私に感謝しろよ?」


 しれっと言うクレーターさんに、あたしは噛みつくように叫んだ。


「なにが感謝よ! これ、なんの嫌がらせなの!?」


「嫌がらせ? 見ての通り、ちょっと小さくしてやっただけだ」


「ちょっとじゃないよ! だいぶコンパクトになっちゃってるよ!」


 しま子はパニック状態で、さっきからずっと半泣きで飛び跳ねている。


 これまでは周りの中で自分が一番大きかったのに、今は世界の全てが巨大化しちゃって、どんなに驚いているだろう。


「大きさが問題だと言うから、小さくしてやったのだ。この『打ち出の小槌』でな」


「う……! ちでの、こづちぃ?」


 って、どっかで聞いたフレーズだよね?


 それって浦島太郎の玉手箱と同じくらいポピュラーな、昔話アイテムじゃない?


 たしか、振ると金銀財宝がジャンジャカと……


「んまあぁ! それが、かの有名な打ち出の小槌ですの!?」


 “金銀財宝ラブ♪”なお岩さんが、目をキラキラ輝かせてクレーターさんに駆け寄って小槌に手を伸ばす。


「こら、気安く触るな。これは水絵巻級の宝物なのだぞ?」


「想像していたよりも地味ですわね! もっと金ピカに輝いている物かと思っていましたわ!」


「それは俗な発想というものだ。世の中は、光ってさえいれば貴重という単純なものではない」


「っていうセリフを、クレーターさんが言うのも妙だよね……」


「なぜそれを、私の頭をしみじみ見ながら言うのだお前は!? なにが言いたい!?」


「そんなことより、打ち出の小槌で小さくしちゃったら元に戻んないじゃん! どうしてくれんのよ!?」


「そんなことより、ぜひわたくしに小槌を振らせてくださいな!」


「ちょっとお岩さん! そんなことってなにさ!?」


「ああ、夢にまでみた大判小判がザックザック~♪ な素晴らしい体験がついに叶いますわ!」
< 241 / 587 >

この作品をシェア

pagetop