神様修行はじめます! 其の五
 お岩さんたら、目が完全に¥マークになっちゃってる……。


 セーラー服を着た美人が、中年サラリーマンにおねだりする図って、ヤバすぎるんですけど。


「これだからシロウトは困るのだ。打ち出の小槌の意味を、お前たちは理解できていないな」


 クレーターさんがヤレヤレと首を横に振り、あたしとお岩さんはお互いの顔を見合った。


 意味って言われても。だって打ち出の小槌って、あれでしょ?


 『お金出てこい』とか、『お屋敷出てこい』とか言いながら振ると、願い通りの物が出てくるってアイテムだよね?


 七福神の大黒様も持っている、富を象徴する万能アイテムじゃん。


「なのに、その小槌を振っても品物は出てこないわけ?」


「いや、ちゃんと出てくる」


「なんだ。やっぱり出てくるんじゃん」


「だがそれは、現実の物ではない。出てきた品物は、鐘の音が聞こえると全て煙のように跡形もなく消えてしまうのだ」


「え!? そうなの!? じゃあマボロシってこと!?」


「望みを唱えて振るだけで、夢や希望が叶うものか。もしそうなら誰も苦労はせん」


 はあ……なるほどシビアだねー。努力しないで手に入れられる物なんて、たかが知れてるし、身につかないってことか。


 やたら教育的な宝物だね。道徳の授業とかに使えそう。


「ただ、一時的に具現化するという利便性はあるのだ。それをうまく使いこなせれば非常に役立つ」


「あ、じゃあ小さくなったしま子の体も?」


「うむ。ただの一時的な現象だ。ちゃんと元通りに戻る」


「良かった! まずそれを先に言ってよ! 一生小さいままなのかと思って本気でアセッたよ!」
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