神様修行はじめます! 其の五
 構わんって……。も、もうムチャクチャだよ、ホントに。


 水園さんが水絵巻を宝物庫から持ち出して、しかもブッ壊したらしいって知ったときは、紙みたいに真っ白になってたくせに。


 自分は平気でこれだもん。本当に水園さんさえ無事なら、自分の身なんてどうでもいいって思ってるんだね。


「……もう、よい。その件については後回しじゃ。そろそろ永久の探索に出かける」


 なんだか疲れたような声を出して、絹糸がフラフラと畳の上を進みだした。


 心労、たたってるなぁ。このチームのリーダーは絹糸だから、全責任が両肩に圧し掛かっている心境なんだろうな。


 ヘタな行動をすれば、ここの全員が自分たちの一族から永久追放されてしまうし。


 プラス、クレーターさんなんか処刑されちゃうことになるし。


 こっち来てから絹糸はずっと平気そうな顔してるけど、ぜんぶ自分の力でなんとか丸く収めようとして、胃痛と戦っているんだろう。


 そんな、自分ひとりで何もかも背負おうとしなくてもいいのにな。


 みんな頼りがいのある仲間なんだからさ、心の重荷は分け合って……


「こりゃ我が子よ! お前はそうしていつまで朝飯をダラダラと食うておるのか!」


「にー! にぃー!」


「我を睨んで反抗しとらんで、さっさと食い終われ!」


「ベルベットちゃん、食事というものは優雅にするものですわ。そう厳しく叱るものではありませんわ」


「お前がそうやって初孫みたいに甘やかすからじゃろうが!」


「ねえ絹糸さん、このスニーカーって履物、なんだかすごく歩きにくいんですけど」


「こりゃ小僧! 靴にヒモを通して結べ! 草履と同じ履き方をするでない!」


「マロはやっぱり素顔は嫌でおじゃるぅ~。グス」


「いい大人が泣くでないわ! マスクでもしておけ!」


 …………。


 なるほど。これじゃ胃も痛くなるわ。


 せめてあたしが絹糸の力になってやんなきゃ。絹糸の胃壁にポッカリ穴が開いちゃうよ。
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