神様修行はじめます! 其の五
 その緊迫した様子に、あたしは勢い込んだ。


「もしかして門川君が見つかったの!? アイツどこにいんのよ!?」


「……そんなバカな……。だがこの気配はたしかに……」


「バカ? いや、門川君がバカなのはもう知ってるから! それよりどこにいるのか教えて!」


 絹糸の背中の毛が、いきなりビビッと立ち上がった。


 宙を見据えた金色の両目は明らかに狼狽していて、普段は冷静な絹糸がひどく動揺しているのが伝わってくる。


 その異様な雰囲気に、この場の全員が緊張した。


「絹糸様? いかがなされましたか?」


「遥峰、お前は気がつかぬのか?」


「いえ、なにも」


「……皆、ついて来い!」


 言うなり絹糸は塀から飛び降りて、一目散に駆けだした。


 セバスチャンさんが間髪置かずに追いかけて、呆気にとられて出遅れたあたしたちが、ようやく走り出す。


「ちょとセバスチャンたらー! どこ行くんですのよー!?」


「絹糸様に聞いてください!」


「絹糸ー! どこ行くのー!?」


「わからぬ! じゃが、異形の気配がした!」


 異形!?


 ああ、そういえば現世にも異形はいるんだったっけ。


「でも薄い影みたいな力の弱いヤツなんでしょ? そんな慌てる必要ないじゃん」


「これはいつもの小物の気配ではない! かなり強大な異形じゃ!」


「え!?」


「こんな大物が暴れ出したら、この辺り一帯が血の海になるぞ! 急げ!」


「ええー!?」


 なに!? 辺り一帯が血で染まるほど大物な異形!? なんで急にそんな強力なヤツが現れたの!? 
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