神様修行はじめます! 其の五
「絹糸! 具体的に異形の気配はどこから漂ってるの!?」


「こっちじゃ! 来い!」


 再び絹糸が走り出して、あたしたちもその後に続いた。


 校舎沿いにグルリと回って正門とは反対の方向に向かうと、校庭が見えてくる。


 周囲を取り囲む緑色のフェンスと、白線とゴールポストが置かれた校庭には、幸いなことに異形の姿も生徒たちの姿も見当たらない。


 まだ騒ぎになっていないことにホッとしながら、油断なく周囲を警戒しつつ絹糸に話しかけた。


「ねえ、異形は? どこにいるの?」


「……消えた」


「え? 消えたってどういうこと? 逃げたの?」


「いいや、どうも妙な具合なのじゃ。さっきから異形の気配を感じたかと思えば、たちどころに消えてしまう。まるで陽炎のようじゃ」


 絹糸は異形の気配を読み取りながら、用心深く校庭の中をうろつき回り始めた。


 頭を低く構えた全身からピリピリした空気が伝わってくる。たぶん優秀な警察犬みたいに、全ての感覚を研ぎ澄ましているんだ。


 初めて見る学校の様子に気を取られながらも、お岩さんたちもその後に続く。


 あたしは校舎の方を気にしながら、みんなの後に続いた。


 さすがにここで派手に戦闘が始まったら、嫌でも先生や生徒たちが気付くよね。みんなが近寄ってきて犠牲者が出たらどうしよう。


 っていうか、異形の姿を見られた時点でアウトじゃん! 見られる前に速攻でケリをつけないと、日本中が大騒動になっちゃう!


 でも絹糸が大物だって言ってたし、そんな簡単に片づけられるかな?


 そんなことを考えながら歩いていると、いつの間にか校庭の真ん中付近まで来てしまった。


 異形の気配を捉え切れないまま、困惑したように絹糸が立ち止まる。
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