神様修行はじめます！ 其の五

「おかしい。いったいこの気配は何なのじゃ？　不可解すぎる」


「ねえ絹糸、やっぱり勘違いなんじゃないの？　現世に来て鼻が利かなくなってるとか？　鼻炎なんじゃない？」


「花粉症でもあるまいし、そんなわけがあるか」


　苦々しい声で言った絹糸の体毛が、突然ビリッと大きく逆立った。


　あたしたちの皮膚を撫でるように軽い静電気がパチッと走って、驚いたみんなが声を上げる。


「わ！？　き、絹糸！？」

「下じゃ！」

「え？　下？　……――――！？」


　あたしの悲鳴は、ノドの奥に飲み込まれてしまった。


　声を出す余裕もないほど唐突に、内蔵まで震わす大きな地響きと、破裂音と、崩壊音が同時発生する。


　そして一瞬で目の前の光景が変わった。


　鼓膜と頭に痛みが走るほど激しい音をたてながら、いきなり校庭の地面が崩落した。


　あたしたちが立っていた中央部から円を描くように、校庭の半分以上を巻き込む巨大な穴が開く。


　当然、そこにいたあたしたちは巻き込まれ、土砂と一緒に一気に落下した。


「――――！」


　声にならない悲鳴……と言うより、声が出ていても自分の耳に聞こえないくらいの激しい崩壊音に襲われる。


　ナイアガラの滝の、土砂バージョンの中に放り込まれてしまった感じ。目の前は降りしきる土の一辺倒。


　あたしの思考は『圧迫死』とか、『墜落死』とか、『窒息死』とかの悲惨なバリエーションでいっぱいだった。


　死ぬー！　死ぬー！　死ぬー！　これ何とかしないと絶対死ぬのに、何ともできないー！


　あっちの世界で自分が死ぬ末路は考えたことあるけど、まさか現世でこんなスペクタクルな死に方するとは思っていなかった！