神様修行はじめます! 其の五
『ヤバイ!』


 本能が強烈な危機を察知したその瞬間、後ろを振り返る間もなく、すさまじい衝撃音が頭上に鳴り響く。


 うわあ!? なんか、攻撃された!?


 マロさんの結界のおかげで実害はないけど、あんまりにも音がスゴくて悲鳴をあげてしまった。


 勢いよく振り向いたら、頭上に黄色い光がポカリとふたつ浮かんでいるのが見えて、思わずつぶやく。


「へ? ……つ、月?」


 その黄色い光は、あの黄とも金とも、白銀とも表現しきれない、月特有の神秘的な輝きを放っていた。


 ほんの、二階程度の高さの至近距離に月? いや、そもそも何で地下に月?


 事情がのみ込めずにポカンと月を見上げていたら、そのふたつの月が、同時にすごいスピードで上へ向かって移動した。


 呆気にとられて動きを目で追っていると、月の下あたりに鈍い光がギラッと走って……


―― ガアァァ――――ン!

「うっひょえぇぇ!?」


 さっきと同じ衝撃音が響いて、あたしは再び悲鳴をあげた。


 ようやく事情が理解できたあたしは、自分の置かれている状況のマズさに青ざめる。


 さっき走った鈍い光は、たぶん牙だ! ふたつの月に見えたのは、月じゃなくて目玉!


 ということは、あたしのすぐ目の前に……


「超巨大な異形がいらっしゃるってか――!?」


 しかもソイツが、牙剥いてガンガン攻めてきやがるんですけど!


 暗くて視界が悪いからほとんど見えないないけど、絹糸の言う通り、かなり大物っぽい! たぶん恐竜レベルだ!


 戦うためには相手をよく見極めなきゃダメだけど、見極めて、自分の真後ろでティラノっぽいのとご対面しちゃったらどうしよー!
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