神様修行はじめます! 其の五
 精神……精神を、集中して滅火の力を発動……。


 でも意識が薄れるし、そのくせ激痛が全身を駆け巡るしで、とても精神統一どころの話じゃない。


 ついに異形の牙が頭上に振りかぶり、まさに命を奪われる瞬間、霞む意識の中で何かの小さな音が聞いた気がした。


 あの音は……


「ガアァァァ――――!」


 胸ポケットの生地がいきなり千々に弾け飛び、ポケットサイズのしま子が、ものすごい勢いで飛び出してきた。


 見る間に元の大きさに戻ったしま子が、あたしの体を貫く寸前まで迫っていた異形の牙を、全力で殴りつける。


 不意を食らった異形が、殴られた反動で仰け反る気配がした。


「し、ま、子……?」


 さっきの音、やっぱり空耳じゃなかったんだ。あれは学校のチャイム。


 そう言えばクレーターさんが言ってた。『打ち出の小槌の効果は、鐘の音が鳴り響けば元に戻る』って。


 超スーパーグッドタイミングじゃん。あたしって、よっぽど日頃の行いが良いのかな?


「ガアァ! ガアァ――――!」


 しま子の咆哮と、激しい攻撃の音が聞こえる。あたしを守るために異形と戦ってくれているんだ。


 でも意識が朦朧としているのと、周りが暗すぎるせいで、状況がまったく分からない。


 しま子、頑張って。お願い、負けないで。


―― ドォ――――ンッ!


 闇を切り裂く青白い雷光が走り、直後に爆発するような激しい衝撃音が鳴り響いた。


 これは絹糸の雷撃だ。絹糸がしま子に加勢してくれているの?
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