神様修行はじめます! 其の五
「小浮気殿、いったいどこに、あなたの娘御がいらっしゃるのです?」
「な、なにを言う! 私の水園はそこにいるではないか!」
「いいえ。おりませぬ」
父と娘の間に壁のように立ちはだかる地味男が、含みのある目つきでニッと微笑んだ。
「あくまでも娘御がいると主張なさるのなら、私は問わねばなりません。『なぜ、あなたの娘御が、こんな所にいるのですか?』と」
噛んで含めるような地味男の言葉に、クレーターさんがわずかに怯んでグッと身を引いた。
そうだ。本来なら水園さんは、現世になんかいちゃいけないんだ。
『なのになぜ現世にいるのか?』って追及されたら、水絵巻の一件が明らかになってしまう。
あたしたちの立場だって同じことだ。
門川君が失踪した事実を、長老の一員である地味男を前にして公言するわけにはいかない。
あたしたちは、水園さんと門川君が現世にいるという事実を認められないんだ。
そんなことしたら全員の首が飛ぶ。
「どうやら、ご理解いただけたようですね。あなたの娘御はここにはいないのです。そうですね?」
穏やかな、まるで子どもに言い含めるようなその言い方。こいつ、事情をぜんぶ知ってるんだ。
静かな口調なのが余計に、敵の手のひらで弄ばれている不快さと悔しさを感じさせる。
それでも、娘を目の前にしたクレーターさんは簡単には引き下がらず、必死の形相で食い下がった。
「な、ならば、あなたはなぜここにいるのだ!?」
「彫刻鳥が上層部に、『異界に異変あり』と知らせてきたからですよ」
彫刻鳥? あ、そういえば太鼓橋の下に飛び込んだとき、監視役の彫刻鳥が橋の欄干にいたっけ。
しまったすっかり忘れてた! もう異変が上層部に知られてしまったんだ!
「異界に縁のある小浮気一族は、宝物庫の検分で手一杯。だから代わりに私が、親切心で調査を申し出たのですよ」
「はあ? 親切心?」
「な、なにを言う! 私の水園はそこにいるではないか!」
「いいえ。おりませぬ」
父と娘の間に壁のように立ちはだかる地味男が、含みのある目つきでニッと微笑んだ。
「あくまでも娘御がいると主張なさるのなら、私は問わねばなりません。『なぜ、あなたの娘御が、こんな所にいるのですか?』と」
噛んで含めるような地味男の言葉に、クレーターさんがわずかに怯んでグッと身を引いた。
そうだ。本来なら水園さんは、現世になんかいちゃいけないんだ。
『なのになぜ現世にいるのか?』って追及されたら、水絵巻の一件が明らかになってしまう。
あたしたちの立場だって同じことだ。
門川君が失踪した事実を、長老の一員である地味男を前にして公言するわけにはいかない。
あたしたちは、水園さんと門川君が現世にいるという事実を認められないんだ。
そんなことしたら全員の首が飛ぶ。
「どうやら、ご理解いただけたようですね。あなたの娘御はここにはいないのです。そうですね?」
穏やかな、まるで子どもに言い含めるようなその言い方。こいつ、事情をぜんぶ知ってるんだ。
静かな口調なのが余計に、敵の手のひらで弄ばれている不快さと悔しさを感じさせる。
それでも、娘を目の前にしたクレーターさんは簡単には引き下がらず、必死の形相で食い下がった。
「な、ならば、あなたはなぜここにいるのだ!?」
「彫刻鳥が上層部に、『異界に異変あり』と知らせてきたからですよ」
彫刻鳥? あ、そういえば太鼓橋の下に飛び込んだとき、監視役の彫刻鳥が橋の欄干にいたっけ。
しまったすっかり忘れてた! もう異変が上層部に知られてしまったんだ!
「異界に縁のある小浮気一族は、宝物庫の検分で手一杯。だから代わりに私が、親切心で調査を申し出たのですよ」
「はあ? 親切心?」