神様修行はじめます! 其の五
 あまりのしらじらしさに、思わずあたしの鼻から息がフッと漏れた。


 親切心云々なんて、嘘っぱち。なぜ地味男がここにいるのかなんて、その答えはもう明らかだ。


 この男が、恐らく今回の騒動の黒幕なんだろう。


 宝物庫の検分の話が持ち上がったのも、そもそも地味男の話がきっかけだった。


 そして水絵巻の紛失事件。水園さんと門川君の失踪。


 本来なら現れるはずのない大物クラスの異形の出現。


 しかもその時、その場所に、グッドタイミングで水園さんと地味男が現れた。


「これらのすべてが偶然のはずないよね? 全部あんたが裏で糸を引いてんでしょ?」


 この男は影の薄い仮面の下に、何かとんでもない計画を抱えているのに違いない。


 その全容は知らないけれど、望みを達するための布陣はまだ整っていないはず。


 なぜなら、あたしたちがここにいるからだ。


 地味男が出現させた神獣をあたしたちが封じて、地味男の計画に狂いが生じた。


 彼はその狂いを軌道修正するつもりなんだ。


 それにはたぶん水園さんが必要で、だから彼女を父親に渡すまいとしている。


 ここで騒ぎを大きくして、門川上層部に不穏な動きを悟られるわけにはいかないのは、地味男も同じ。


 あたしたちはお互いの首に刃物を突き付け合って、睨み合っている状態なんだ。
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