神様修行はじめます! 其の五
 それにそんな事実が一般に知れ渡ったら、メンツどころの騒ぎじゃない。


「その点、この小娘ならば『天内一族最後の末裔』という、大義名分が立つ。蛟よ、そうであろう?」


「はい。混乱は最小限に抑えられるかと存じます」


「ふうむ。筋は通っておるな」


 絹糸の納得声を聞きながら、あたしの胸は静かに高鳴り始めていた。


 地味男の話が、神の一族にとって大変な問題だってことは、おバカな頭でもよくわかる。


 常世島の人たちのためにも、すごく深刻に考えなきゃならない大問題なんだけど……。


 でも、でもさ……


 これってあたしと門川君に、いい風が吹いてるんじゃない!?


 これまであたしと門川君の仲が認めてもらえなかった、その最大の原因が、最大の武器になるってことじゃん?


『災い転じてナントカカントカ』って、このことじゃん! 意味よく覚えてないけど!


 やっぱ人生って何があっても、ヘコたれずにチャンスを狙い続けるべきなんだねー!


『野球はツーアウトから』って言うもんねぇ!


「と、当主様、は、発言をお許しください」


 背中に回した手でコッソリと勝利の握り拳を握っていたら、上層部の誰かが声を上げた。


 門川君が、前列に座っているその人に向かって声をかける。


「許す」


「蛟様のおっしゃることは、道理でございます。ですが、やはりそこにも問題がございます」


「問題とは?」


「どこにも確証がございませぬ」


 門川君が口元に当てていた手を下ろし、小さくうなづいた。
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