神様修行はじめます! 其の五
 誇らしそうに胸を張って宣言するお岩さんに、すっかり飲まれた真美が、疑問と不信感丸出しの表情であたしを見る。


 答えと救いを同時に求めるような顔をしてる真美に、あたしは懸命に言い繕った。


「あ、あのさ、不運に見舞われた者同士、なんとなく穴の底で奇妙な友情が芽生えちゃってさー」


「なにをおっしゃいますの? アマンダとわたくしの尊い友情は、もうずっと前から……」


「ほんと、偶然通りがかったせいで、お互い大変な目に遭いましたよね! お岩さ…… い、岩子さん!」


「ジュエルですわ!」


「違うでしょ! 違うのよ! あなたは通りすがりの、権田原岩子さんなの!」


 そうでしょ!? お願いそうだと言って!


 必死にアイコンタクトするあたしの形相を見て、ようやく悟ったらしいお岩さんがハッとする。


「そ、そうでしたわ。わたくしは、偶然ここを通りがかった一般人なのでしたわ」


 お岩さんはコホンと咳払いをしてニコリと微笑み、改めてスカートの裾を摘んで深々と真美に頭を下げた。


「失礼いたしましたわ、篠田様。わたくし、通りすがりの権田原岩子と申します」


「は、はあ。どうも岩子さん」


「わたくしは、ただの影の薄い一般人ですので、どうぞ存在を忘れてくださいな」


「いや、なんかやたらと強烈で、忘れられそうにないんですけど……」


「天内さん、権田原さん! なにやってるんですか!?」


「天内のお嬢様。一刻も早くここから立ち去りましょう」


 今度は凍雨くんとセバスチャンさんが近寄ってきて、あたしは頭を抱えてヘタリ込みそうになった。


 いやー! 次から次へと現れないで問題児!


 頼むから、黙って素直に何も言わずにこの場から粛々と立ち去ってー!
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