神様修行はじめます! 其の五
……やっぱり、いた。
予感はしていたから、さほど驚かなかった。
天上の月から一本の細い白銀色の光線が、真っ直ぐ下に向かって降りている。
その光線は光の粒ひとつひとつが意志を持つように、キラキラと瞬いていた。
白銀色の光に照らされて闇に浮かび上がる人の、例えようもない面立ちの美しさ。
まるで作り物のような、この世の物ならぬ妖しい光景を醸す彼女の膝元には、金色に輝く水絵巻があった。
神秘の月光は水絵巻に直接吸い込まれていく。
「水園!」
クレーターさんが娘に向かって呼びかけた。
悲しみの色濃く宿る表情で、水絵巻に月光が吸い込まれる様子を見守っていた水園さんが、ハッと顔を上げる。
「父上様、いけない! ここへ来てはなりません!」
泣き声と、わずかな言葉以外では、それが初めて聞いた水園さんの生々しい声だった。
「お願いです! どうか今すぐ、ここから立ち去ってくださいませ!」
「なにを言う水園! 去るというならお前も一緒だ!」
「いいえ! どうか私のことは、お捨て置きください!」
そう言って顔を背けて唇を噛む水園さんに、クレーターさんは叫んだ。
「いったい、なにがあったのだ!? あの蛟の男はお前になにをした!? お前はなにをさせられているのだ!?」
「…………」
「水園! すべて私に話しなさい!」
綺麗な流線型をした水園さんの眉が、ピクピクと苦しそうに歪んでいく。
血が出るんじゃないかと思うくらい強く噛んだ唇から、ひと言、声が漏れた。
「復讐……です」
予感はしていたから、さほど驚かなかった。
天上の月から一本の細い白銀色の光線が、真っ直ぐ下に向かって降りている。
その光線は光の粒ひとつひとつが意志を持つように、キラキラと瞬いていた。
白銀色の光に照らされて闇に浮かび上がる人の、例えようもない面立ちの美しさ。
まるで作り物のような、この世の物ならぬ妖しい光景を醸す彼女の膝元には、金色に輝く水絵巻があった。
神秘の月光は水絵巻に直接吸い込まれていく。
「水園!」
クレーターさんが娘に向かって呼びかけた。
悲しみの色濃く宿る表情で、水絵巻に月光が吸い込まれる様子を見守っていた水園さんが、ハッと顔を上げる。
「父上様、いけない! ここへ来てはなりません!」
泣き声と、わずかな言葉以外では、それが初めて聞いた水園さんの生々しい声だった。
「お願いです! どうか今すぐ、ここから立ち去ってくださいませ!」
「なにを言う水園! 去るというならお前も一緒だ!」
「いいえ! どうか私のことは、お捨て置きください!」
そう言って顔を背けて唇を噛む水園さんに、クレーターさんは叫んだ。
「いったい、なにがあったのだ!? あの蛟の男はお前になにをした!? お前はなにをさせられているのだ!?」
「…………」
「水園! すべて私に話しなさい!」
綺麗な流線型をした水園さんの眉が、ピクピクと苦しそうに歪んでいく。
血が出るんじゃないかと思うくらい強く噛んだ唇から、ひと言、声が漏れた。
「復讐……です」