神様修行はじめます! 其の五
「これか!」


 いきなり絹糸が大声を上げて、あたしはポカンと口を開いたまんま、そっちの方を向いた。


「水園が太鼓橋の水底から水晶を奪ったのは、水絵巻の修復に必要だったからではない。水絵巻の『改良』に必要だったのじゃろう」


「改良? どんな?」


「見ての通り、実体化じゃ」


 水絵巻は、過去の映像を動画の再生みたいに映し出す宝物。


 その実体化? つまり、映像を3Dに変化させるってこと、なの……?


「ええぇ!?」


 事態を理解できたあたしは、そのトンデもなさに素っ頓狂な声を張りあげてしまった。


 そ、そんなことできるの!? てか、していいの!?


「過去の人間を作り出しちゃうなんて、3Dプリンターで拳銃密造するよりヤバいじゃん!」


「どうやら、あれは実体化しているだけのようじゃ。生命や自由意思までは吹き込まれてはおらぬようじゃが」


 いや、どっちにしろヤバイって。


 命のない体が存在してるってことは、幽霊が肉体を持っちゃったようなもんでしょ?


 それ、まんまゾンビじゃん。


 ……ん? 待てよ? ゾンビ?


 どっかで聞いたフレーズじゃないか? それ。


「ねぇ、絹糸。命を持たない実体って……」


「そうじゃ。岩のペットになった亀と同じじゃよ」


 うん、マクシミリアンも同じだ。とっくの昔に滅びてしまったはずの種なのに、命を持たない状態でいきなり復活して動き回った。


 それって、水絵巻のせいなの?
< 296 / 587 >

この作品をシェア

pagetop