神様修行はじめます! 其の五
壁のように目の前を覆っていた白い空気が、ゆっくり、ゆっくりと闇に飲まれて消えていく。
その、徐々に開けた視界の向こうには……。
「水、園……」
かすれ声でつぶやいたクレーターさんが、呆けた顔で娘の姿を見つめている。
夜目にも白く浮かぶほど青ざめた顔をした水園さんは、そんな父親の視線を、真っ直ぐに受け止めていた。
その表情を、なんと例えればいいだろう。
諦め。終焉。失望。喪失。……絶望。
それらすべてを合わせても、まだ足りない。
逃げ続けていた現実と、恐れ続けた世界の終わりに直面した者の顔だった。
彼女が子どもの頃からずっと守り続けた世界は、いま終わった。
水園さんは『持たざる者』だったんだ。でも……。
「でも、どうして今まで誰も気がつかなかったんでしょうか?」
誰に問うでもない、凍雨くんの小さな疑問の声は、そのままあたしの疑問でもあった。
どうしてこんなに長い間、誰にも気づかれずにいられたんだろう?
「小浮気は、他一族とは隔離された水底で暮らしておったからな。それに戦場に駆り出される類の能力でもないから、露見しにくかったのじゃろう」
絹糸のそんな説明にも、まだ腑に落ちない。
戦場で戦わないにしても、小浮気一族だって遊んで暮らしていたわけじゃない。
それどころか、水底の下で過酷な労役に苦しめられていた。
子どもやお年寄りや、病人まで駆り出して、そのせいで死人が出るくらい一族総出で上層部からの任命に当たっていたのに。
その、徐々に開けた視界の向こうには……。
「水、園……」
かすれ声でつぶやいたクレーターさんが、呆けた顔で娘の姿を見つめている。
夜目にも白く浮かぶほど青ざめた顔をした水園さんは、そんな父親の視線を、真っ直ぐに受け止めていた。
その表情を、なんと例えればいいだろう。
諦め。終焉。失望。喪失。……絶望。
それらすべてを合わせても、まだ足りない。
逃げ続けていた現実と、恐れ続けた世界の終わりに直面した者の顔だった。
彼女が子どもの頃からずっと守り続けた世界は、いま終わった。
水園さんは『持たざる者』だったんだ。でも……。
「でも、どうして今まで誰も気がつかなかったんでしょうか?」
誰に問うでもない、凍雨くんの小さな疑問の声は、そのままあたしの疑問でもあった。
どうしてこんなに長い間、誰にも気づかれずにいられたんだろう?
「小浮気は、他一族とは隔離された水底で暮らしておったからな。それに戦場に駆り出される類の能力でもないから、露見しにくかったのじゃろう」
絹糸のそんな説明にも、まだ腑に落ちない。
戦場で戦わないにしても、小浮気一族だって遊んで暮らしていたわけじゃない。
それどころか、水底の下で過酷な労役に苦しめられていた。
子どもやお年寄りや、病人まで駆り出して、そのせいで死人が出るくらい一族総出で上層部からの任命に当たっていたのに。