神様修行はじめます! 其の五
 まともな悲鳴を上げる間もなく、目の前に半透明の膜が現れて、それと同時に激しい衝撃を感じた。


 水絵巻から飛び出してきた巨大な物質がすごいスピードで突進してきて、マロさんが張ってくれた結界に激突したんだ。


 結界がガードしてくれて助かったけど、あまりにも勢いよく衝突されて、ビビッたあたしは尻もちをついてしまった。


「マ、マロさんサンキュー!」


「うおぉ、よ、よかったでおじゃるぅ! 間に合わないかと思ったでおじゃるぅ!」


 あたしと同じように地べたに尻もちをついたマロさんが、胸を撫で下ろしている。


 見れば結界は、いつもの薄黄色い膜とは違った無色の半透明。


 しかも薄い一枚板の壁が目の前にデーンと立っているだけで、めっちゃ即席ってカンジだ。


 ほとんど無意識に張った簡単な結界なんだろう。ホント間に合ってくれて助かった!


「いったいなにが飛び出してきたんですの!?」


「わかんない! やたらデカブツだったような気がするけど!」


 背後を振り返って確認したけれど、なにも見当たらない。


 てっきりまた古代の異形が襲ってきたと思ったのに、そんな影も形もなく、周囲は夜の山中の静かな風景が広がっているばかりだ。


「どこかに隠れていますの? それとも逃げてしまったのかしら?」


「逃げたら逃げたでヤバイじゃん! 異形がいきなり町の中に出現したら、実録・『シン・ゴ◯ラ』だよ!」


「とりあえず警戒は必要でおじゃる。今のうちに結界を張り直し……」


 マロさんの声に混じって不思議な風の音が聞こえた気がして、あたしは耳をそばだてた。


 これ、さっき聞いた音と同じ音?
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