神様修行はじめます! 其の五
「水絵巻の使用が叶えば、たちどころに真実を確かめられましょう」


「しかしあれは門川の……ひいては神の一族全体の家宝なのだ。僕個人の所有物ではない」


「では、この場の皆様にもお願い申し上げまする」


 平伏していた頭を上げて、地味男が背筋を伸ばして振り返る。


 そして自分の後ろにいる大勢の当主たちに向かって、滔々と語りかけた。


「この由々しき事態を治めるためにも、水絵巻の力を用いるべきかと存じますが、皆様いかに?」


 当主たちがお互いの腹を探り合うように、それぞれ顔を見合わせている。


 やがて、誰かひとりが小さな声を上げた。


「賛同、いたしまする……」


 すると堰を切ったように、次から次へと賛同者が現れる。


「賛同いたしまする」「同じく」「同じく」


 ……はぁ、先頭がひとり右を向くと全員、右ならえというか。


 前ならえというか、左向け左というか、こんなところもきっちり集団パフォーマンス。


 変なところで息ピッタリなんだよなぁ。この連中。


 まあ、それはともかくとして、確かにこの件はせっぱ詰まった大問題だ。


 上位一族同士だけの問題じゃない。神の一族全体の問題になる。


 だったらやっぱり普段はめったに出番のない、ご自慢の家宝の、久々の腕の見せ所ってことだ。
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