神様修行はじめます! 其の五
「にいぃ――!」
軽口を叩きながらも満身創痍の絹糸に、お岩さんの胸元から飛び出した子猫ちゃんが擦り寄っていく。
愛しそうにその頭を舐める絹糸の全身が、白くて柔らかい光に包まれた。
我が子の治癒を受けながらグッタリと目を閉じている絹糸に、あたしは状況を報告する。
「あのね絹糸、地味男が言ってたの。『現世を見捨てろ』って」
「……そうか」
一瞬だけ薄っすらと目を開け、すぐに絹糸はまた目を閉じる。そのたったひと言で意味を理解したようだった。
「さあ、私の言うことをご理解していただけましたか? 現世を捨て置けば、二度とそのような命にかかわる傷を負う者も出なくなりますよ?」
全員が振り返った先に、地味男がニコニコと微笑みながら佇んでいる。
こんな壮絶な戦いの現場は初めてのはずなのに、動揺ひとつ見られない。
なんて食えない男だろう。この男は毒にも薬にもならない顔をしながら、その胸の奥にこんな恐ろしい決意を秘めていたなんて。
すべては、愛する人を目の前で失ってしまったために……。
「どのようにして異形を現世に呼び込むつもりでございますか? 成重様」
セバスチャンさんが、落ち着いた声で旧友に問いかける。
「現状、どうあっても現世に異形は入り込めません。古代の異形をいくら作り出したところで、あなた様の計画は果たされますまい」
セバスチャンさんの言う通りだ。
現世で古代種を作り出したところで、地味男の計画的にはなんの意味もないんだ。
神の一族たちを襲っている異形たちを現世に引き込まなければ、彼の目的は果たされないんだから。
なのに、なんでこんなことをしているんだろ?
軽口を叩きながらも満身創痍の絹糸に、お岩さんの胸元から飛び出した子猫ちゃんが擦り寄っていく。
愛しそうにその頭を舐める絹糸の全身が、白くて柔らかい光に包まれた。
我が子の治癒を受けながらグッタリと目を閉じている絹糸に、あたしは状況を報告する。
「あのね絹糸、地味男が言ってたの。『現世を見捨てろ』って」
「……そうか」
一瞬だけ薄っすらと目を開け、すぐに絹糸はまた目を閉じる。そのたったひと言で意味を理解したようだった。
「さあ、私の言うことをご理解していただけましたか? 現世を捨て置けば、二度とそのような命にかかわる傷を負う者も出なくなりますよ?」
全員が振り返った先に、地味男がニコニコと微笑みながら佇んでいる。
こんな壮絶な戦いの現場は初めてのはずなのに、動揺ひとつ見られない。
なんて食えない男だろう。この男は毒にも薬にもならない顔をしながら、その胸の奥にこんな恐ろしい決意を秘めていたなんて。
すべては、愛する人を目の前で失ってしまったために……。
「どのようにして異形を現世に呼び込むつもりでございますか? 成重様」
セバスチャンさんが、落ち着いた声で旧友に問いかける。
「現状、どうあっても現世に異形は入り込めません。古代の異形をいくら作り出したところで、あなた様の計画は果たされますまい」
セバスチャンさんの言う通りだ。
現世で古代種を作り出したところで、地味男の計画的にはなんの意味もないんだ。
神の一族たちを襲っている異形たちを現世に引き込まなければ、彼の目的は果たされないんだから。
なのに、なんでこんなことをしているんだろ?