神様修行はじめます! 其の五
「そんなことさせないからね!」
「なぜです?」


 速攻で返されて、一瞬、言葉に詰まった。なんでって……。


「そ、そんな疑問文で返されるような、おかしなことじゃないでしょ!?」


「なぜ現世を守らなければならないのです? そんな理由がどこにあるのです?」


 理由って、理由がなきゃ現世を守っちゃダメなわけ?


 ……あ、わかった!


「地味男って、汗水流してボランティア活動してる人に対して、『この偽善者め』とか言うタイプでしょ絶対!」


 地味男は一瞬キョトンとして、すぐに眉を八の字にしてプッと吹き出して笑った。


 そしてなんだか困ったように微笑んで、あたしのことを見ている。


 それは今まで彼があたしたちに見せていた、取り繕った微笑とはまったく違う表情に思えた。


「そうかもしれませんね。あなたの言う通り、無償の行為というものは非常に美しいと私も思います。ですが、美しすぎるのですよ」


「なにそれ? どういう意味よ?」


「あなたも、『過ぎたるは猶及ばざるが如し』という言葉を知っているでしょう?」


「…………」


「あ、知りませんでしたか?」


「し、知ってるもん! 『なにごとも、ほどほどに』って意味だよ!」


 たしかそれで合ってるハズ。だと思う。……たぶん。


 ちょっと不安だったけど、地味男が何度もうなづくのを見て安心した。


 おお、やっぱり正解だったか。よかった、恥かかなくてすんだ。


「ええ、そうですよ。つまり……」


 ひと呼吸おいて、地味男が言葉を続ける。


「どんなに良いことでも、度が過ぎればそれは毒にしかならない。という意味です」
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