神様修行はじめます! 其の五
その、いかにも含みのある口調にあたしは押し黙ってしまった。
地味男と話していると、なんだか大人に諭されている小さな子どものような気持ちになってくる。
「誰かのために身を粉にして尽くし、我が身を犠牲にして他者を救う。たしかにそれは褒め称えるべき行為でしょう」
「…………」
「でもその対価として、生き残る能力を持っていなかった者が生き残り、本来なら生き残れるはずだった者が死ぬことになるのですよ? それは果たして『正しい』ことなのですか?」
地味男はそこまで言って、いったん息を切った。
そして再び語り出す声に、さらに力がこもる。
「それは本末転倒です。生きるべき者が生き、死すべき者が死ぬことこそが自然の摂理。摂理を曲げては世界は立ち行かぬのです」
地味男の言葉が胸の中に入り込み、あたしの心を落ち着きなく掻き乱す。
こんなに動揺してしまうのは、地味男の言うことが決して間違いじゃないことを、あたし自身よく知っているからだ。
たしかに地味男の言う通りで、それが自然な命の形だろう。
世界っていうのはそれほどまでに無情で、理不尽で、容赦がないってことを、あたしはこの一年間で嫌というほど学んだ。
……でも、だからこそ人は人を救いたいと願うんだ。
無情と理不尽と容赦のない現実に苦しむ人たちを、守りたいと思う気持ちがこの世界に生まれるんだ。
その気持ちは、かけがえのないものだとあたしは信じている。
「地味男は、力のない者は死んでもしかたないって言うの?」
「そうです」
「そんなのひどい。野生動物だって、赤ちゃんとかの弱い者を仲間が守るじゃんか」
「それは『仲間』だからです。子が育たなければ自分の種族が滅亡してしまうから、身を賭して仲間を守るのですよ」
「あたしたち人間だってそうじゃん!」
「いいえ、違います。私たちと現世の人間たちとでは、種が根本的に違うのです」
地味男と話していると、なんだか大人に諭されている小さな子どものような気持ちになってくる。
「誰かのために身を粉にして尽くし、我が身を犠牲にして他者を救う。たしかにそれは褒め称えるべき行為でしょう」
「…………」
「でもその対価として、生き残る能力を持っていなかった者が生き残り、本来なら生き残れるはずだった者が死ぬことになるのですよ? それは果たして『正しい』ことなのですか?」
地味男はそこまで言って、いったん息を切った。
そして再び語り出す声に、さらに力がこもる。
「それは本末転倒です。生きるべき者が生き、死すべき者が死ぬことこそが自然の摂理。摂理を曲げては世界は立ち行かぬのです」
地味男の言葉が胸の中に入り込み、あたしの心を落ち着きなく掻き乱す。
こんなに動揺してしまうのは、地味男の言うことが決して間違いじゃないことを、あたし自身よく知っているからだ。
たしかに地味男の言う通りで、それが自然な命の形だろう。
世界っていうのはそれほどまでに無情で、理不尽で、容赦がないってことを、あたしはこの一年間で嫌というほど学んだ。
……でも、だからこそ人は人を救いたいと願うんだ。
無情と理不尽と容赦のない現実に苦しむ人たちを、守りたいと思う気持ちがこの世界に生まれるんだ。
その気持ちは、かけがえのないものだとあたしは信じている。
「地味男は、力のない者は死んでもしかたないって言うの?」
「そうです」
「そんなのひどい。野生動物だって、赤ちゃんとかの弱い者を仲間が守るじゃんか」
「それは『仲間』だからです。子が育たなければ自分の種族が滅亡してしまうから、身を賭して仲間を守るのですよ」
「あたしたち人間だってそうじゃん!」
「いいえ、違います。私たちと現世の人間たちとでは、種が根本的に違うのです」