神様修行はじめます！　其の五
　地味男の言葉がグサリと胸に突き刺さった。


　それは神の一族と現世の血の両方を受け継いでいるあたしにとって、聞き逃すことのできない言葉だった。


　だからあたしは速攻で反論する。


「違わないよ。どっちもおんなじ人間じゃんか」


「いいえ、違います」


「違わない！　なに言ってんの地味男ってば！」


「ならばあなたはご自分の正体を、ご両親やご友人たちに打ち明けているのですか？」


「……！」


　顔を強張らせるあたしに、地味男は淡々と言葉を続ける。


「言えないでしょうね。なぜならあなた自身が知っているからです。自分と彼らが違うのだと言うことを」


「………」


「あなたは、つらくないですか？　偽りの生活を続ける行為と、自分自身に対して、苦しみを感じませんか？」


　なにも言えなくなったあたしは、唇をギュッと噛んだ。


　お父さんやお母さんや、真美に対して嘘を重ねるときに感じる背徳感が、胸の中にヒタヒタに押し寄せる。


　言えない事実。騙している現実。


　本当の自分の姿を打ち明けられないのは、あたしが彼らを欺いているから？


　本当は仲間じゃないのに、仲間のふりしているからだって言うの？


「あなたが神の一族の能力を現世で披露したとしたら、現世は容赦なくあなたを弾き飛ばすでしょうね」


　もしもあたしが、滅火の力をみんなに見せたら？


　その結果を考えただけでゾッとする。世の中は大パニックになるだろう。


　あたしはバケモノ扱いを受けて、まるで凶悪事件の犯罪者みたいに追いかけ回されるのは間違いない。


　お父さんやお母さんや真美は、そんなあたしを受けいれてくれるだろうか？


　受け入れてくれたとして、みんなにどんな迷惑をかけることになるか分からない。


　あたしに関わる人たちは絶対に、この世界でまともに生きてなんかいけない。人生真っ暗闇になっちゃう。
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