神様修行はじめます! 其の五
―― バリ――――ン!


 鈍い大きな音と一緒に、粉々に砕けた透明な氷が四方に飛び散っていく。


 もう万事休す……! と思った瞬間、マクシミリアンの尾が素早く動いた。


 ヘビの姿をした尾がギュンッと伸び上がり、目にも止まらぬ素早さで龍の喉元に牙を剥いて、肉をガバッと食いちぎっていく。


 うへえ、生々しい! 龍の生肉なんて初めて見た。


 ……あ、でも、もしかしたら牛刺しとか馬刺しみたいに美味しいのかな?


 ごっそり肉を持っていかれたその喉元の奥の方に、生々しい肉片に埋もれた金色の物体がチラリと見えた。


「それじゃ! その宝珠を壊せ!」


 あたしの腕の中で絹糸が叫んだ。


「え? ほ、ほーじゅ? 絹糸、宝珠ってなんのこと?」


「その金の宝珠は龍の力の源なのじゃ! それを壊せ!」


「マクシミリアーン! なんかよく分かんないけど、とにかくその金ピカぶっ壊してー!」


 マクシミリアンの尾が再び宝珠を目がけて飛び掛かる。


 そうはさせまいと、龍は満身の力でマクシミリアンの体を締め付けようとした。


 でもそれより一瞬早く、ヘビの尾が金色の宝珠に牙を立てる。


 するとあっけないくらい儚い音を立てて、宝珠は千々に砕け散ってしまった。


「やった! でかしたマクシミリア……ぁぁあ!?」


 宝珠を破壊された龍が、断末魔の力でマクシミリアンを急激に締め付けたせいで、ついに甲羅が破壊されてしまった。


 ペシャンコに潰されてしまったマクシミリアンが天を仰ぎ、声もなく痙攣する。


 ふたつの神獣の姿は、さっきの水園さんたちの人形のようにボロボロと崩れ落ち、靄に戻って空気に紛れて消滅してしまった。
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