神様修行はじめます! 其の五
 と、慌てている間にも、地面から発せられる光がどんどん強くなってくる。


 やばいやばいー。道が開く。すぐにも開いちゃうよこれ!


「みんな、早くここから退避しよう!」


「退避ったって、どこに行くんですか!?」


「地面全般、どこもかしこも光りまくってますわ! どこにも逃げ場なんてありませんわ!」


 うわ、なんだか足元が熱い。靴の裏が溶けるんじゃないかってくらい、急激に地面が熱せられている。


「マロさん、結界の強化お願い!」


「とっくにやっているのでおじゃる! それでも防ぎきれない『何か』が、結界の壁を通り抜けてくるのでおじゃる!」


 マロさんの言う通り、重くて粘っこい何かが肌にまとわりつき始めた。


 しかも変なガスでも混じってるみたいに、鼻の奥がツンと刺激されて涙がにじんでくる。


 もう繋がりかけている。この場所と異界の空間が直結しかけているんだ。


「絹糸、道が繋がったことを異形に気づかれるまで、時間の猶予はどれくらいある!?」


「猶予などない。連中はあっという間に、ダムの放水並みの勢いで飛び出してくるであろうな」


「どうすればもう一度道を隠せるの!?」


「その方法を知っているのは大昔の神の一族たちだけじゃ。文献でも調べれば、どこかに記されているやもしれぬが」


「のんきに本のページなんかめくってる時間ないよ!」


 叫んだノドに、むわっと臭気が入り込んできて派手に咳き込んでしまった。


 これが異形の世界の空気? ……すごい。息するだけで心の奥まで蝕まれてしまいそう。


 結界を張っていても防ぎきれないほど危険な臭気が、ここから一気に現世に広まってしまうことになる。


 体の弱い赤ちゃんやお年寄りなんて、それだけで消滅してしまうかも。


 なんとかしなきゃ。なんとか……。
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