神様修行はじめます! 其の五
 焦るばかりでなんの名案も浮かばず、ノドが焼けるみたいに痛んでセキが止まらない。


 苦し……酸欠……目の前がチカチカする。


 みんなも激しくセキこみながら、肩と背中を大きく上下させてゼイゼイ息を切らしていた。


 このままじゃみんな、いずれ呼吸困難であの世行きだ。


 地べたにうずくまって息を切らしながら顔を上げたら、ふらつく視界の先に地味男の姿が見えた。


 地味男だって苦しい状況は同じはずなのに、黙って天を見上げたまま静かに佇んでいる。


 遠い空の向こうを眺める瞳は深い悲しみに満ちていて、この緊迫した状況下で動揺している素振りもない。


 ……あぁ、彼は甘んじて受け入れている。


 自分の命が削られていく恐怖と苦しみを、あえて受け入れているんだ。


 それは、かつて自分が愛した女性が受けた物と同等の苦悩だから。


 水晶さんを守ることができなかった己を、同じ苦痛をその身に受けることで強く罰しているんだ。
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