神様修行はじめます! 其の五
 で、あの素晴らしい頭頂部に、さらに味わい深い趣をそえているのが、その周囲。


 ……微妙~~~に残ってんのよ。


 前髪部分や側頭部分に、フワフワと、極細の柔らかそうな黒い『ブツ』が。


 うぅーん……あの光景をなんて表現すればわかってもらえるのか……


 そう! 隕石落下のクレーター跡地!


 ほぼ真円に近い感じで、根こそぎ毟り取られてしまった周囲に、息も絶え絶えに残った植物の残骸ってカンジ!


「あの無残さというか、儚さっていうか、名残り惜しさっていうかもう……絶妙だね」


「胸にヒシヒシと迫るものがあるのぅ。確かに一度みたら忘れられぬわい」


 うん。ある意味パーフェクトな光景だもの。あんな完璧なハ…… ゴホン! 頭頂部って。


 一種の男の美学さえ漂っている。


「もともと神経の細い男なのじゃよ。一族の長という立場がよほど重圧なのじゃろう」


 それがドッと髪にきたわけか。お気の毒……。


「で、小浮気って、どんな一族なの?」


「門川の蔵の中の管理を、一手に任されておる一族じゃ」


「へ? ただの倉庫管理が仕事? そのわりにずいぶん前の方に座ってんじゃん?」


「ただの蔵ではない。宝物庫の管理じゃ。その責任は重大なのじゃぞ?」


「そうなの?」


「少しでも不手際があれば、問答無用で当主の命を代償にして、詫びねばならぬ掟じゃ」


「命と引き換え!? す、すさまじい重みだね!?」


「だからこその、あの頭のてっぺんなのであろうよ」


「すごく納得……」
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