神様修行はじめます! 其の五
「天内君」


 唐突に自分の名前を呼ばれて、心臓がドキッと高鳴った。


 門川君があたしのことをじっと見つめていて、あたしは思わずゴクリとツバを飲み込む。


 いざこうして彼と向き合った途端に、心臓がこんなに苦しくなってビビってる。


 会えない間の彼の気持ちが、どんなだったのか。

 いま、なにを考えているのか。

 これからあたしになにを言うつもりなのか。


 それを知ることが、知らなきゃならないことが、やっぱり怖い……。


「天内君、済まない。僕は……」


 門川君が話し始めて、あたしが反射的にビクッと身を引いた瞬間……


―― ヒュイィィ――――ン!


 ものすごい音が空に響き渡った。


「ひょえっ!?」っと悲鳴を上げたあたしは、両手で耳をバシッと閉じて身をかがめてしまう。


 音が衝撃波になって四方八方に飛び散っていき、周囲の木々の枝が弾き飛ばされていった。


 まるで見えない機関銃を、頭のイカレたやつが狂喜してぶっ放してるみたいだ!


 イデデデ、耳の奥がめっさ痛い! 鼓膜破れちゃうよー!


「龍じゃ!」


 絹糸が鋭い叫び声を上げた。


 見れば、さっきの龍が天を仰いで身を震わせながら、怒りの大咆哮をしている。


 そうだ、そういえばいたっけコイツ。門川君の登場ですっかり忘れてた。


 せっかく異界のトンネルを繋ごうとしていたのに、邪魔されてキレたんだ。


 それにしても、龍の鳴き声って超うるさい! すっごい高音の笛の音が、何百、何千って集合して大合奏してるみたい!


 みんなも両手で耳を塞いで歯を食いしばり、このけたたましい大音量に懸命に耐えている。
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