神様修行はじめます! 其の五
「いいえ。それは違います。あなた様は我らの当主。我ら神の一族とその世界以外に守るべき物など、あってはならぬのです」
それは、これまでにないほど力強い口調だった。
『その世界以外に、守るべきものなどない』
それこそが彼の本心。
彼は今、自分が心から守りたいと願い、なのに目の前で無惨に散ってしまった、愛する人の命を思っている。
水晶さんが死んだことが、彼はどうしても、どうしても許せない。
水晶さんを守れなかった自分自身をも、同じように決して許せない。
だから、今度こそ守ろうとしているんだ。水晶さんが『美しい』と言った、あちら側の世界を。
それが地味男にとって唯一の愛の証。それ以外に彼には、もう水晶さんへ愛の証を立てるすべがない。
だから彼は、彼の行為を邪魔する者を全力で排除しようとするだろう。
大きな愛と……それを上回るほどの深い悲しみゆえに。
夜の闇の中、山中に静かな風が吹き、木々の葉をざわめかせている。
まるですすり泣きのようなその風に、地味男の背中まで届く長い髪がさらりと揺れた。
水晶さんが死んだあの日、あの髪はまだもっと短くて……水晶さんの血の色が、飛沫のように染みていた。
あの日から彼は、髪を切ることもできずに伸ばし続けていたのだろうか。
そんなにも、そんなにも彼は、水晶さんを愛していたんだろうか。
世界ひとつを滅ぼすことも躊躇しない、身勝手としか言いようのない愛。
……それでもあたしは少しだけ、それほど深く愛されていた水晶さんを羨ましく思った。
それは、これまでにないほど力強い口調だった。
『その世界以外に、守るべきものなどない』
それこそが彼の本心。
彼は今、自分が心から守りたいと願い、なのに目の前で無惨に散ってしまった、愛する人の命を思っている。
水晶さんが死んだことが、彼はどうしても、どうしても許せない。
水晶さんを守れなかった自分自身をも、同じように決して許せない。
だから、今度こそ守ろうとしているんだ。水晶さんが『美しい』と言った、あちら側の世界を。
それが地味男にとって唯一の愛の証。それ以外に彼には、もう水晶さんへ愛の証を立てるすべがない。
だから彼は、彼の行為を邪魔する者を全力で排除しようとするだろう。
大きな愛と……それを上回るほどの深い悲しみゆえに。
夜の闇の中、山中に静かな風が吹き、木々の葉をざわめかせている。
まるですすり泣きのようなその風に、地味男の背中まで届く長い髪がさらりと揺れた。
水晶さんが死んだあの日、あの髪はまだもっと短くて……水晶さんの血の色が、飛沫のように染みていた。
あの日から彼は、髪を切ることもできずに伸ばし続けていたのだろうか。
そんなにも、そんなにも彼は、水晶さんを愛していたんだろうか。
世界ひとつを滅ぼすことも躊躇しない、身勝手としか言いようのない愛。
……それでもあたしは少しだけ、それほど深く愛されていた水晶さんを羨ましく思った。