神様修行はじめます! 其の五
「蛟殿、あなたの気持ちは理解する。だが僕には、どうあってもそれを許容することはできない」
「ええ、左様でございましょうとも。当主様の真意は、私にも手に取るように理解できますので」
地味男は急に口角を上げて、顔を反らしてクスクスと小さく笑った。
「神の一族の誇りだなんだと言ったところで、それはあなた様の建て前にすぎない」
肩を揺らし、地味男は笑い続けている。皮肉の色が混じったその声は門川君を揶揄しているというより、まるで自嘲しているように聞こえた。
「あなた様が現世を守りたいと思うのは、義務感でも使命感でもない。単純に現世があなたの愛する人にとって、かけがえのない場所だからだ」
……え?
地味男のその言葉にハッとしたあたしは、思わず門川君を見た。
現世が、門川君の愛する人の……? それって……。
視線の先の門川君は、地味男に反論するでもなく、黙り込んだまま地味男の言葉を聞いている。
「愛する人が大切に思う物を、自分の手で守りたい。つまりあなた様と私は、同じ穴のムジナだ」
クツクツと笑うたびに揺れていた肩が、ピタリと止まった。
一転して表情の消えた顔をこちらに向けて、地味男が低い声で断言する。
「ならばあなた様の願いだけが通り、私の願いが排除されるべき理由など、どこにもない」
「蛟殿、僕は……」
地味男の手がスッと上がり、門川君の言葉を拒絶する。
「当主様、もはや問答は無用なのです」
その言葉と同時に、地味男の足元から大量の白い靄が噴出する。
彼の姿は靄に包まれ、あっという間に見えなくなった。
「皆、油断するでないぞ! おそらくまた神獣が出てくるはずじゃ!」
絹糸の警告の声に、白く染まって視界が効かない空間に、一気に緊張が走った。
あたしも身構えながら、素早く周囲に注意を向ける。
また龍が出てくるの!? どんだけ出てくんのよ! あんまり量産するとプレミアム感がなくなって、ありがたみが薄くなるぞ!
でも、もう怖くない。こっちには門川君がいる。龍でもなんでも、いくらでもドンと来い、だ。
一匹でも十匹でも百匹……は、ちょっと怖いかもしんないから、できれば十匹程度だったらありがたいなー。
「ええ、左様でございましょうとも。当主様の真意は、私にも手に取るように理解できますので」
地味男は急に口角を上げて、顔を反らしてクスクスと小さく笑った。
「神の一族の誇りだなんだと言ったところで、それはあなた様の建て前にすぎない」
肩を揺らし、地味男は笑い続けている。皮肉の色が混じったその声は門川君を揶揄しているというより、まるで自嘲しているように聞こえた。
「あなた様が現世を守りたいと思うのは、義務感でも使命感でもない。単純に現世があなたの愛する人にとって、かけがえのない場所だからだ」
……え?
地味男のその言葉にハッとしたあたしは、思わず門川君を見た。
現世が、門川君の愛する人の……? それって……。
視線の先の門川君は、地味男に反論するでもなく、黙り込んだまま地味男の言葉を聞いている。
「愛する人が大切に思う物を、自分の手で守りたい。つまりあなた様と私は、同じ穴のムジナだ」
クツクツと笑うたびに揺れていた肩が、ピタリと止まった。
一転して表情の消えた顔をこちらに向けて、地味男が低い声で断言する。
「ならばあなた様の願いだけが通り、私の願いが排除されるべき理由など、どこにもない」
「蛟殿、僕は……」
地味男の手がスッと上がり、門川君の言葉を拒絶する。
「当主様、もはや問答は無用なのです」
その言葉と同時に、地味男の足元から大量の白い靄が噴出する。
彼の姿は靄に包まれ、あっという間に見えなくなった。
「皆、油断するでないぞ! おそらくまた神獣が出てくるはずじゃ!」
絹糸の警告の声に、白く染まって視界が効かない空間に、一気に緊張が走った。
あたしも身構えながら、素早く周囲に注意を向ける。
また龍が出てくるの!? どんだけ出てくんのよ! あんまり量産するとプレミアム感がなくなって、ありがたみが薄くなるぞ!
でも、もう怖くない。こっちには門川君がいる。龍でもなんでも、いくらでもドンと来い、だ。
一匹でも十匹でも百匹……は、ちょっと怖いかもしんないから、できれば十匹程度だったらありがたいなー。