神様修行はじめます! 其の五
 彼の口から吐き出される、ひとつひとつの言葉が、あたしの心にスッと無理なく染み込んでくる。


 門川君と彼のお母さんとの関係。あたしとしま子との関係。


 そのふたつと、それぞれが迎えることになった結末は、すごく似ている気がした。


「母上が殺されたとき、まだ僕は幼かったから思い出は少ないけれど、記憶の中の母上はいつも『笑顔』だったよ。ただ……どことなく違和感は感じていた」


 いったん言葉を切り、門川君は言葉を選んでいるかのように、とても慎重に話し始めた。


「いま思えば、母上の笑顔の裏側には引き出しがあって、そこにいろんな物を詰め込んでいたのだろう。でも幼い僕には、それがなんなのか理解してさし上げることができなかった」


 笑顔の奥の引き出しに、ぎっしりと隠された感情。


 それはきっと寂しさや、不安や、願いだ。


『この平凡な日々よ、どうか続いてくれ』と、門川君のお母さんもずっと願い続けていたんだ。


「僕が母上の気持ちを察して、お守りするべきだったのに、守られるだけ守られたままみすみす見殺しにしてしまった」


 心臓がギュッと痛んで、あたしは一瞬、息を止めた。


 自分の中の強烈な後悔を、ソックリそのまま突き付けられているみたいだ。


「そんな僕が……水園殿と出会ったんだ」
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