神様修行はじめます! 其の五
「僕は水園殿に母上の面影を重ねているだけだ。たしかに彼女を強く思慕しているが、それは母親へ向けるのとまったく同質の感情だよ」


「…………」


「ちなみに言っておくが、僕は亡き母上に恋愛感情を抱いたことは一度もない」


「……でないと困るよ」


「だいだい、どう考えても無理なんだよ。僕にはキミという愛する人がいるのに、水園殿に恋愛感情を持つわけがないだろう?」


 あたしは思わず、グッと息をのみ込みながら彼の顔を注視した。


 こんな風にきっぱり断言されると、彼の心を疑っていた自分が、すごく低俗な人間に思えてしまう。


「僕が愛しているのはキミだよ。他の女性を愛することなど、僕には不可能だ」


「そ、それは、心変わりとかよく言うじゃん! ほら、寂しい心の隙間に忍び寄る危険な甘い囁き、とか!」


「心変わり? 僕が愛する人は永遠にキミだけだ。『危険な囁き』とやらが入り込む隙間もないよ。僕の心はキミへの想いで一杯だから」
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