神様修行はじめます! 其の五
 思い切り意外なことを言われて、あたしは彼の胸に顔をくっつけながら、目をパチパチさせた。


 魅力がないって、これはまた、ご謙遜を。


 水園さんの隣に並んでも遜色ないほどの美貌は、最近少しずつ男らしさも漂い始めてきて、見慣れているあたしでもドキッとするほど。


 頭の回転の速さ、正確な判断力と実行力、それらを裏打ちする豊富な知識量。


 加速度的に進化する言霊師としての能力の高さは、間違いなく門川の歴史に名を残すだろう。


 まさに『門川に、永久あり』。彼を讃えるこの言葉にふさわしい華麗なる君主で、彼こそが頂点に立つ男だ。


「僕は、セバスチャンや岩さんのように機知に富んではいないし、典雅殿のように他者の心の機微に聡くないし、塔子殿のような闊達さはない」


「それは、そうかもしれないけど」


「それに凍雨くんのように素直ではないし」


「それは、まぁ」


「浄火君のような激しさもない」


「それは別に、なくてもいい。アイツちょっとうるさ過ぎるから」


「それに、しま子のように純粋でも優しくもない」


「…………」


「キミは自覚していないだろう? そんな僕がキミの愛を勝ち得たのは、まさに奇跡のようなものなんだ」


 門川君の指が、あたしの髪を優しく撫でている。何度も何度も、大切な宝物を確かめて安心しているみたいに。


「いつもいつも不安なんだ。キミを失うことが怖くて堪らない。だから……僕は黙って姿を消したんだよ」


「どういう、こと?」


「今回の件が露見したら、キミは僕よりも現世を選ぶかもしれない。そう思ったんだ」
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