神様修行はじめます! 其の五
 びっくりして目をパチパチさせたら、涙で湿った両目に空気が沁みて、ちょっと痛い。


 門川君が、またあたしの髪を撫でながら言葉を続けた。


「覚えているかい? 奥方との決戦の前夜に、権田原の里でふたりで話したことを」


「……なんだっけ?」


「『なにかを得るためには、なにかが犠牲になる。すべてを手に入れることはできない』 そう言う僕に、キミは心の底から不思議そうな顔をして言ったんだよ」


「……?」


「『なんで手に入らないと勝手に思い込むのか? それが本当に欲しい物なら、ガンバッてみればいいだけの話だ』って」


「……あ」


「ガンバッてみて、手に入ったらラッキー。入らなかったらその時はその時だ。キミは単純明快にそう言って笑ったんだよ」
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