神様修行はじめます! 其の五
「あのとき僕が願った、すべてを守りたいという志は、おそらくこれからも果たされることはないのだろう」


「門川君……」


 誰も犠牲にならずに済む世界。誰もが一人残らず笑顔で生きていける世界。


 それが門川君の望む世界だ。


 でも、それを望む彼自身がよく知っている。そんな理想郷は現実にありえないってこと。


 不可能という言葉は純然と存在し、人も、世界も、望んだままの姿ではいてくれない。


 現実は圧倒的に立ち塞がり、願っても願っても、血を吐くほどに願い続けても……きっと叶わない。


 その切なさと虚しさを、誰よりも自分が一番よく知っている。


 知っているのに、それでも……。


「それでも、しま子は願い続けていたんだ。ただ純粋に、『愛する者と共にいたい』と」
< 420 / 587 >

この作品をシェア

pagetop