神様修行はじめます! 其の五
 あたしの中の、しま子?


 ……大きくて丸い、ひとつ目の赤鬼。


 ニコッと笑うと消えて無くなっちゃいそうな目が、あたしは大好きだった。


 頭のツノに留まった小鳥が可愛い声で鳴くのに合わせて、自分も『うあぁぁ~♪』って、楽しそうに歌ってた。


 大きな手で、いつもあたしを包み込んでくれた、あの素敵な温もり。


 鋭く尖った自分の爪であたしを傷つけてしまわないように、ふわりと優しく抱きしめて、頬ずりしてくれたあの感触。


 特製のエプロンをつけて、かいがいしく庭掃除をする姿。


 おいしいお茶を淹れてくれて、自慢そうに胸を張る姿。


 巨体を丸めるようにして、ちょこんと正座しながら、小首をかしげてあたしをじーっと愛しげに見つめる姿。


 あのしま子も、このしま子も、どのしま子も、あたしはみんな覚えてる。


 覚え……て、る……。


「……グスッ……ひっく」


 門川君の胸元を、またあたしの涙が濡らしてしまう。


 お、覚えてる、よ。


 しま子の記憶があたしの中からいくらでも溢れ出てきて、とめられないよ。


 こんなにこんなに、あたしはこんなに、しま子を覚えてるよ……。
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