神様修行はじめます! 其の五
「しま子自身の記憶は消えた。でもキミはしま子を覚えている。それは、キミと共にありたいというしま子の願いの、ある意味での成就だよ」
「で、でも、それは……」
「きれいごと? おためごかし? ていの良い言い訳?」
門川君が、あたしの意を汲んでくれるように次々と言葉を用意する。
あたしは彼の胸に顔を押し付けて泣きじゃくりながら、いちいち小さくうなづいた。
その通りだと思う。
そんなの、どうにもならない悲しい事実を慰めるための、適当な言いぐさとしか思えない。
「なら、しま子は後悔していると思うかい? 『どうせ叶わないんだから、願わなきゃよかった』と」
「そうは思わないけど、でも結果は……」
「そうだ。願いは届かず消えてしまった。あの、水底の水晶原の光のように」
「……!」
「キミはあの水晶の光を見て、なにかを感じなかったかい?」
あたしの脳裏に、水底の水晶原の光景が鮮明に甦る。
誰に知られることも、気づかれることもなく、どこにも届かぬ光を無心に放ち続けていた水晶たち。
儚い蛍のように、次々と生まれて消えるさだめの白い輝きは、あの暗黒の世界を照らすことは決してないだろう。
それでもあたしは、自分の目の前に広がるあの光景を、確かに『美しい』と感じた。
あの比類ない純粋さが、けなげさが、気高さが、しま子の姿と重なる。
決して届かぬ月へと向かい、自分の持てる精いっぱいで、両手を差し伸べているしま子の姿と。
「届いたんだよ。少なくとも、キミの中に」
「で、でも、それは……」
「きれいごと? おためごかし? ていの良い言い訳?」
門川君が、あたしの意を汲んでくれるように次々と言葉を用意する。
あたしは彼の胸に顔を押し付けて泣きじゃくりながら、いちいち小さくうなづいた。
その通りだと思う。
そんなの、どうにもならない悲しい事実を慰めるための、適当な言いぐさとしか思えない。
「なら、しま子は後悔していると思うかい? 『どうせ叶わないんだから、願わなきゃよかった』と」
「そうは思わないけど、でも結果は……」
「そうだ。願いは届かず消えてしまった。あの、水底の水晶原の光のように」
「……!」
「キミはあの水晶の光を見て、なにかを感じなかったかい?」
あたしの脳裏に、水底の水晶原の光景が鮮明に甦る。
誰に知られることも、気づかれることもなく、どこにも届かぬ光を無心に放ち続けていた水晶たち。
儚い蛍のように、次々と生まれて消えるさだめの白い輝きは、あの暗黒の世界を照らすことは決してないだろう。
それでもあたしは、自分の目の前に広がるあの光景を、確かに『美しい』と感じた。
あの比類ない純粋さが、けなげさが、気高さが、しま子の姿と重なる。
決して届かぬ月へと向かい、自分の持てる精いっぱいで、両手を差し伸べているしま子の姿と。
「届いたんだよ。少なくとも、キミの中に」