神様修行はじめます! 其の五
 その言葉に誘われたように、あたしの両目から涙がドッと噴き出した。


「届かなかったか? 届いただろう?」


 門川君からの問いかけに、答えることはできない。いま口を開いたら、子どもみたいにわあわあ大声で泣いてしまいそう。


 みっともなく鼻水を啜りながら、肩を震わせて、あたしは何度もコクコクうなづいた。


 うん……。届いたよ。


 ちゃんと届いた。


 水晶の輝きも、しま子の気持ちも、あたしの中に届いて、ちゃんと存在してるよ。


 だってしま子は、あたしの大好きなあの笑顔で、いつも大切なことをあたしに伝えてくれていた。


『りお、だあーいすき』って……。


 この耳にはっきりと残ってる。しま子の声が、聞こえるよ……。


「あ、あたしも、しま子が、大好きだよ……」


 ねぇ、しま子。あたしたちはこんなにもお互いが大好きで、ずーっと一緒にいたいと願ったね。


 その願いは届かなかったけど……


 決して届かぬ月に願いをかけてしまうほど、あたしたちはお互いが大切で、かけがえのない存在だった。


 あたしの中のしま子は、こんなに確かで、こんなに純粋で、こんなに美しいよ。


 それを、他の誰でもないあたしが知っている。


 だから祈ることも、願うことも、その願いが叶わなかったことも、無意味なんかじゃない。


 たとえどんなに時が移ろい、世界の姿が変わり果て、叶わぬ願いが闇夜の中に儚く溶けてしまったとしても。
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