神様修行はじめます! 其の五
 灼熱の風圧が全身にドッと襲いかかってきて、たまらずあたしの体が横っ飛びに吹っ飛んだ。


 風って実態がないはずなのに、まるで鉄球を腹にブチ込まれたような感じだ。


 廊下をゴロゴロ転がって突き当りの壁にドカッと激突し、お腹と背中に感じた痛みに呻き声をあげる。


「うっぐぅ!」


 髪の毛から焦げ臭い臭いがする。たぶん前髪あたりが焼けたんだ。


 顔とか手とかの皮膚がジリジリと鋭く痛むのは、ヤケドしたんだと思う。体を包む空気が、ものすごく熱い。


 転がったまま痛みに耐えつつ周りを確認したら、様子が一変していた。


 窓ガラスも壁もふすまも、めっちゃくちゃに破壊される。爆撃でも食らったみたいに視界全域が轟々と燃え盛ってる。


 嵐のような炎の音が渦巻いて、見上げた屋根には大穴が開いていて、そこからも盛大に踊り狂う炎が見えた。


 天井からパラパラと黒焦げになった木材の破片が落ちてくる中、あたしはなんとか身を起こした。


 そして……


「……!」


 破壊された窓の外、業火の中に静かに佇み、こちらをジッと見ているひとりの男の姿を見つけて息をのむ。


 一瞬の間を置いて、大声を上げた。


「地味男!」
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