神様修行はじめます! 其の五
 それぞれの挨拶を済ませて、後ろ髪を引かれるようにしながら、皆が部屋から出て行った。


 絹糸としま子が見送りに出て、部屋にはあたしと門川君のふたりきり。


 人払いをしているから本当に誰の気配も無くて、辺りは急に静まり返ってしまう。


 シンと落ち着いた空気の中、あたしたちは、なんとなく隣同士でペタンと腰をおろした。


 そして対のお人形みたいに並んだまま、ふたりとも、何もしゃべらない。


 お互いぼんやりと、畳の目とか床の間の掛け軸なんかを、だまって眺めたりして……。


 そんな静かな一刻の間をおいて、ようやく門川君が、ぽつんとあたしの名を呼んだ。


「天内君」

「ん?」

「………」

「……うん」


 門川君は何も言わなかったけど、あたしはそう答えた。


「うん、わかってる。わかってるから」


 何度もコクコクうなづくあたしを、門川君は真面目な顔してじっと見つめている。


 そして思い切ったように、静かに話し始めた。


「これが唯一の手段なんだ」


「うん」


「考えたが、これしか方法がない。この機会を逃せば、水絵巻はまた宝物庫の奥深くだ」


「そだね」


「僕は、出口を見失ってしまったあのふたりに、手を差し伸べたい」


「うん、あたしもだよ」


「半年、どうか待っていてくれ」


「うん。 ……あのね、門川君」


「なんだい?」


「あたし、門川君のこと、好き」
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