神様修行はじめます! 其の五
『本当に素晴らしいですね。お日様も、お花も、地面も、空気も、ビックリするほど素晴らしいですね!』
あぁ、ほらやっぱり。このセリフ覚えてるもん。
この映像は、あのときあたしたちが水底で見たのと同じものだよ。
「ねえ絹糸、そうだよね?」
「どうやらそのようじゃな。しかし、いったいどうしてこのような現象が……」
「水絵巻ですわ」
空中に映る水晶さんの姿を見上げながら、お岩さんが明確な声で答えた。
「わたくしが水絵巻を踏み潰したとき、わたくしと地味男は水飛沫を浴びてしまいましたでしょう?」
「あ……。そういえばそうだったね」
「水に触れたことによって、地味男の過去が甦ったのですわ。それが水絵巻の能力ですもの」
「でもそんなことが可能なのかな? だって本体はこんな壊滅的に壊れちゃってるのに」
驚くあたしに、絹糸が首を傾げながら答える。
「水絵巻の最後の力か。燃え尽きる前のロウソクの火がいっそう明るく輝くのと同じ現象なのやもしれぬ。くわしいことは分からぬが」
地味男はそんなあたしたちの会話も耳に入らない様子で、水晶さんの姿を呆けた表情で眺めている。
落ちくぼんだ細い両目は、まるで信じられない奇跡を見たように大きく見開かれ、愛しい人を見つめていた。
「水……晶……」
青ざめた唇から、その名が紡がれる。
「水晶。水晶。水晶。水晶……」
何度も何度も、目の前の人に呼びかける地味男の声。
でも繰り返すその声は……愛しい人には決して届かない。
その人はもう、とうの昔に逝ってしまった人だから。
それでも、それを承知で呼び続ける地味男の声はとても優しくて、深い愛の色に満ちていた。
「あぁ、わたしの愛しい水晶……」
優しい声が、涙に染まる。
血濡れた地味男の頬を洗い流すように、幾筋もの涙がポロポロと伝って落ちた――……。
あぁ、ほらやっぱり。このセリフ覚えてるもん。
この映像は、あのときあたしたちが水底で見たのと同じものだよ。
「ねえ絹糸、そうだよね?」
「どうやらそのようじゃな。しかし、いったいどうしてこのような現象が……」
「水絵巻ですわ」
空中に映る水晶さんの姿を見上げながら、お岩さんが明確な声で答えた。
「わたくしが水絵巻を踏み潰したとき、わたくしと地味男は水飛沫を浴びてしまいましたでしょう?」
「あ……。そういえばそうだったね」
「水に触れたことによって、地味男の過去が甦ったのですわ。それが水絵巻の能力ですもの」
「でもそんなことが可能なのかな? だって本体はこんな壊滅的に壊れちゃってるのに」
驚くあたしに、絹糸が首を傾げながら答える。
「水絵巻の最後の力か。燃え尽きる前のロウソクの火がいっそう明るく輝くのと同じ現象なのやもしれぬ。くわしいことは分からぬが」
地味男はそんなあたしたちの会話も耳に入らない様子で、水晶さんの姿を呆けた表情で眺めている。
落ちくぼんだ細い両目は、まるで信じられない奇跡を見たように大きく見開かれ、愛しい人を見つめていた。
「水……晶……」
青ざめた唇から、その名が紡がれる。
「水晶。水晶。水晶。水晶……」
何度も何度も、目の前の人に呼びかける地味男の声。
でも繰り返すその声は……愛しい人には決して届かない。
その人はもう、とうの昔に逝ってしまった人だから。
それでも、それを承知で呼び続ける地味男の声はとても優しくて、深い愛の色に満ちていた。
「あぁ、わたしの愛しい水晶……」
優しい声が、涙に染まる。
血濡れた地味男の頬を洗い流すように、幾筋もの涙がポロポロと伝って落ちた――……。