神様修行はじめます! 其の五
『もしまたお会いできたらその時は、よいお日和ですねって、今みたいにお声をかけてくれませんか?』
月の中で語る少女の姿が、透き通るように薄らいでいく。
記憶が……想いが、消滅する。
それらをこよなく愛した彼の命が、途切れていく。
「…………」
求め続けた指先が、パタリと地に落ちた。
すでに彼の目から光は失せ、呼吸も止まり、体から生気が抜けている。
世界のひとつを破滅に導きかけるほど、激しい愛に翻弄された男の唇は、もうなにも答えることはできなかった。
「地味男……」
土気色になった、もの言わぬ屍に変わり果てた彼に、あたしは涙を流しながら呼びかける。
「地味男……さようなら」
きっとあなたは、答えたのだろう。
『よいお日和ですね』と。
心の底から幸せそうに笑いながら、その言葉を愛する人に告げたはずだ。
やっとのことでたどり着いた、ふたりだけの美しい世界の中で。
残されたあたしたちは、そう信じるよ。
そして、ふたりが愛し合っていた事実を胸に刻もう。
届かぬ月に手を伸ばすように。
『どうか』『せめて』と切なる願いを込めながら、あなたたちに久遠の別れを告げるんだ。
さようなら。
さようなら。
さようなら。
あぁ、月よ。どうか……。
どうか……。
せめて……。
月の中で語る少女の姿が、透き通るように薄らいでいく。
記憶が……想いが、消滅する。
それらをこよなく愛した彼の命が、途切れていく。
「…………」
求め続けた指先が、パタリと地に落ちた。
すでに彼の目から光は失せ、呼吸も止まり、体から生気が抜けている。
世界のひとつを破滅に導きかけるほど、激しい愛に翻弄された男の唇は、もうなにも答えることはできなかった。
「地味男……」
土気色になった、もの言わぬ屍に変わり果てた彼に、あたしは涙を流しながら呼びかける。
「地味男……さようなら」
きっとあなたは、答えたのだろう。
『よいお日和ですね』と。
心の底から幸せそうに笑いながら、その言葉を愛する人に告げたはずだ。
やっとのことでたどり着いた、ふたりだけの美しい世界の中で。
残されたあたしたちは、そう信じるよ。
そして、ふたりが愛し合っていた事実を胸に刻もう。
届かぬ月に手を伸ばすように。
『どうか』『せめて』と切なる願いを込めながら、あなたたちに久遠の別れを告げるんだ。
さようなら。
さようなら。
さようなら。
あぁ、月よ。どうか……。
どうか……。
せめて……。