神様修行はじめます! 其の五
あのとき彼女は、何かに驚いたように大きく両目を見開いて宙を凝視してた。
地味男が亡くなる前に水絵巻の力が作動したのと似たような原理で、お岩さんも過去の映像を見たんだろう。
その後、彼女はなにも語らず、セバスチャンさんとの関係もなにも変わっていない。
変わった事と言えば……
実は今、お岩さんと凍雨くんの間に結婚話が持ち上がっていること。
もちろん凍雨くんはまだ中学生くらいの年齢だから、すぐに結婚するってわけじゃなくて、するなら婚約ってことになるけど。
どうも両一族の間での話し合いは順調らしく、本決まりになりそうな感じだ。
こちらの世界での結婚は、必ずしも恋愛感情ってのは必要じゃない。
当主同士の結婚は、一族同士の契約的な意味が強いから。
婚約だって、その場しのぎの場合が多い。つまり、嫌な相手と結婚させられそうになるのを回避するため、別の誰かと一応婚約しておくとか。
お岩さんも以前、子作りマシーンと強引に結婚させられそうになったし。
今回の件はそんな事態を防ぐための予防線として、それに凍雨くんが協力してくれているんじゃないかな?
ここ最近、少し大人びた目をするようになった凍雨くんを見て、なんとなくそう感じた。
……お岩さんがあの時どんな映像を見たのか、どんな事実を知ったのか、あたしには分からない。
どんな決意で、凍雨くんとの結婚話を進めているのかも分からない。
お岩さんはなにも話さないから。
たぶん彼女はセバスチャンさんにも誰にも、なにも言ってないんだと思う。
淡々と、そして飄々と、時おり笑い合ったりして縁談話を進めているお岩さんとセバスチャンさんの和やかな空気を見てると、そんな気がする。
あたしも、なにも聞かないし。
べつにお岩さんのこと、心配してないわけじゃないんだよ。正直に言えば、ふたりのことが気になって気になって気になって仕方ない。
凍雨くんとの結婚話のことだって、本当はどんな気持ちでいるのか気になってしょうがない。
でも絹糸に、
『それで? お前は詳細を根掘り葉掘り聞き出したいのか?』
って言われて……首を横に振った。
あたしがお岩さんを心配してるからって、それでお岩さんの心の中の大切なものを探り出していいってことにはならない。
お岩さんが黙っていたいなら、それでいい。
誰かにしゃべりたくなったら、あたしにしゃべってもいいし、他の誰かにしゃべっても構わないんだ。
お岩さん自身が望むように、したいようにすればいい。
あたしはただ、今までもこれからもずっと変わらずお岩さんのことが大好きで、そばにいるだけ。
そして彼女が必要としたときは、全身全霊全力でもって彼女の力になるんだ。
もちろん凍雨くんだって大切な仲間だから、『なにかあったらいつでも話を聞くからね』って速攻で伝えたよ。
そしたら凍雨くんは、『ありがとうございます。その時がきたら、ぜひ』って答えたんだ。
やっぱり、ちょっと大人びた目をして微笑みながら。
だからあたしは、何も言わずに黙って三人を見守っていることにしたんだ。
地味男が亡くなる前に水絵巻の力が作動したのと似たような原理で、お岩さんも過去の映像を見たんだろう。
その後、彼女はなにも語らず、セバスチャンさんとの関係もなにも変わっていない。
変わった事と言えば……
実は今、お岩さんと凍雨くんの間に結婚話が持ち上がっていること。
もちろん凍雨くんはまだ中学生くらいの年齢だから、すぐに結婚するってわけじゃなくて、するなら婚約ってことになるけど。
どうも両一族の間での話し合いは順調らしく、本決まりになりそうな感じだ。
こちらの世界での結婚は、必ずしも恋愛感情ってのは必要じゃない。
当主同士の結婚は、一族同士の契約的な意味が強いから。
婚約だって、その場しのぎの場合が多い。つまり、嫌な相手と結婚させられそうになるのを回避するため、別の誰かと一応婚約しておくとか。
お岩さんも以前、子作りマシーンと強引に結婚させられそうになったし。
今回の件はそんな事態を防ぐための予防線として、それに凍雨くんが協力してくれているんじゃないかな?
ここ最近、少し大人びた目をするようになった凍雨くんを見て、なんとなくそう感じた。
……お岩さんがあの時どんな映像を見たのか、どんな事実を知ったのか、あたしには分からない。
どんな決意で、凍雨くんとの結婚話を進めているのかも分からない。
お岩さんはなにも話さないから。
たぶん彼女はセバスチャンさんにも誰にも、なにも言ってないんだと思う。
淡々と、そして飄々と、時おり笑い合ったりして縁談話を進めているお岩さんとセバスチャンさんの和やかな空気を見てると、そんな気がする。
あたしも、なにも聞かないし。
べつにお岩さんのこと、心配してないわけじゃないんだよ。正直に言えば、ふたりのことが気になって気になって気になって仕方ない。
凍雨くんとの結婚話のことだって、本当はどんな気持ちでいるのか気になってしょうがない。
でも絹糸に、
『それで? お前は詳細を根掘り葉掘り聞き出したいのか?』
って言われて……首を横に振った。
あたしがお岩さんを心配してるからって、それでお岩さんの心の中の大切なものを探り出していいってことにはならない。
お岩さんが黙っていたいなら、それでいい。
誰かにしゃべりたくなったら、あたしにしゃべってもいいし、他の誰かにしゃべっても構わないんだ。
お岩さん自身が望むように、したいようにすればいい。
あたしはただ、今までもこれからもずっと変わらずお岩さんのことが大好きで、そばにいるだけ。
そして彼女が必要としたときは、全身全霊全力でもって彼女の力になるんだ。
もちろん凍雨くんだって大切な仲間だから、『なにかあったらいつでも話を聞くからね』って速攻で伝えたよ。
そしたら凍雨くんは、『ありがとうございます。その時がきたら、ぜひ』って答えたんだ。
やっぱり、ちょっと大人びた目をして微笑みながら。
だからあたしは、何も言わずに黙って三人を見守っていることにしたんだ。