神様修行はじめます! 其の五
これが最後になる通い道が涙で霞む。
いつもと変わり映えのない平凡な景色が、まるで宝物みたいに特別に見えた。
毎日毎日、なにも考えずに通っていた道。
塀から顔を出してる、ちょっと邪魔っけな庭木の花。それぞれの家の玄関のデザイン。軒下に並べられたプランターの緑。
空き地に生えてる雑草も、舗装道路のチグハグな色も、いつもそこにあって、ごく普通で、当然な物だと信じていた。
なんでもっとよく見なかったんだろう。なんでもっと感動しなかったんだろう。
こんなにも特別で、もう二度と見ることができない景色を……。
自宅に着いて、頬の涙を手でゴシゴシ拭きながら玄関に入ったら、ちょうどそこにお母さんがいた。
泣きながら帰宅したあたしをビックリした顔で見ている。
「お帰り、里緒。どうかしたの?」
「お母さん……」
「なにかあったの?」
心配そうに近寄って聞いてくるお母さんを見たら、胸がギュウッと苦しくなって息が詰まってしまった。
お母さんとも、もう会えない。
そんなことは夢にも思っていなかった。お父さんとお母さんこそ、なにがあっても絶対あたしと一緒にいる存在だって、無意識に信じ込んでいた。
まさか、そのお母さんやお父さんとお別れしなきゃならない日がくるなんて。
いつもと変わり映えのない平凡な景色が、まるで宝物みたいに特別に見えた。
毎日毎日、なにも考えずに通っていた道。
塀から顔を出してる、ちょっと邪魔っけな庭木の花。それぞれの家の玄関のデザイン。軒下に並べられたプランターの緑。
空き地に生えてる雑草も、舗装道路のチグハグな色も、いつもそこにあって、ごく普通で、当然な物だと信じていた。
なんでもっとよく見なかったんだろう。なんでもっと感動しなかったんだろう。
こんなにも特別で、もう二度と見ることができない景色を……。
自宅に着いて、頬の涙を手でゴシゴシ拭きながら玄関に入ったら、ちょうどそこにお母さんがいた。
泣きながら帰宅したあたしをビックリした顔で見ている。
「お帰り、里緒。どうかしたの?」
「お母さん……」
「なにかあったの?」
心配そうに近寄って聞いてくるお母さんを見たら、胸がギュウッと苦しくなって息が詰まってしまった。
お母さんとも、もう会えない。
そんなことは夢にも思っていなかった。お父さんとお母さんこそ、なにがあっても絶対あたしと一緒にいる存在だって、無意識に信じ込んでいた。
まさか、そのお母さんやお父さんとお別れしなきゃならない日がくるなんて。