神様修行はじめます! 其の五
 こんなに切ないふたりの気持ちを知る者なんて、涙の向こうに覗く月だけ。


 闇の中にぽつんと浮かぶ金色は、とめどない悲しみに霞んで、ひどく朧に頼りなく。


 先の見えない道をぼんやりと照らし、人の心を淡々と促す。


 この儚い道行きの他には、なんのすべもない。


 行ける場所は唯ひとつ。


 なにを犠牲にしてもどれほどまでに嘆こうとも、あなたしか、キミしか、私には選べないから。


 そのことがこんなにも悲しく。


 そして、ひたすらに愛しい。


「…………」


 無言の指先に力がこもる。


 月のように時が満ちて、あたしたちは手を取り合って進み始めた。


 この先へ。


 ここに留まることはもう、できない。


 だから行く。


 あたしは、あなたと共に。


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